リハビリ職と患者さんのコミュニケーションでは、曖昧な用語は避けよう

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リハビリ場面における会話で患者さんに「??」とさせてしまったことはないだろうか。

日常的に私たち療法士は医療用語などの専門的な言葉を使ったり、療法士の都合の良い表現を使ったり…実は言葉そのものが患者さんに伝わっていないことがある

今回紹介する論文は、医療コミュニケーションにおける言語表現の理解について調査している興味深いものである。この論文を読んで、あまり気にしていなかった日々の臨床での言語表現を振り返ってみて欲しい。

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論文:医療コミュニケーションを妨げる曖昧な言語表現について:用語の理解に関する調査

梅津 和子, 萩原 明人, 信友 浩一

医療と社会 Vol. 13 (2003) No. 3 P 3_103-3_119 

要旨

近年,わが国では疾病構造が変化し,感染症に代わって生活習慣病が大部分を占めるようになった。それに伴い医療者と患者の関係も症状があるときだけの一時的なものから生活指導などを含む継続的なものに変化してきた。その際,医療者のコミュニケーション能力が大切な資質であるという認識が一般化しつつある。日常生活でよく使われる程度を表す形容詞や副詞の曖昧さが医療コミュニケーションの妨げになっているという指摘はあるが今日まで実証的研究が行われていない。

そこで,本研究では医療者と患者間のコミュニケーションに用いられる曖昧な表現の理解を,職種別,年齢階層別,性別で検討した。

その結果,職種間,年代間でずれがあることが明らかになった。この理解のずれは医療コミュニケーションの障害になる可能性がある。従って,当事者間でずれを防ぐ努力の必要性が示唆された。

j-stageより

今回の論文もj-stageにて全文読めるので、時間がある際に是非とも読んでいただきたい。

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要旨だけでは分からないので、少し解説する。

この論文では、日常語・医療用語の受け取り方の違いを医師・医療者(理学療法士など)・市民で比較している。また、男女や年齢によっても比較している。

例えば、「人数が多い」という言葉を聞いたときに、イメージする人数は下記のようになっている。

  • 医師…13人
  • 医療者…13人
  • 市民…10人

となり、医師-市民、医療者―市民で有意差があるとしている。

用語理解の異なる日常語

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このように日常語では、下記のものが医師―医療者―市民で少しずつイメージするものが異なると調査している。

  • 多い(人数)
  • 長い(時間、分)
  • ずいぶん前(日数)
  • たまには(月あたり頻度)
  • もう少し(時間)

この中で1つ、特徴的なものを紹介する。

あなたが風邪をひいて、早く診察して欲しい時があるだろう。その時「もう少しお待ちくださいね…」と、言われることはないだろうか?このときに想定する時間はそれぞれ下記のようになっている。

  • 医療者…18分程度
  • 市民…15分程度
  • 医師…24分程度

「もう少しお待ちくださいね…」から、「15分くらい待てばよい」と受診する人は思っているが、医師は25分近く待たせるつもりなのだ!

となると、患者さんは10分も長く待たされている気分になってしまうため、人によってはクレームに結びついてしまうだろう。「もう少しお待ちくださいね」という言葉は、私たち療法士も日常的に使ってしまうが、具体的に待つ時間を明確にした方が良いだろう。「あと20分程度待っていただけますか?」と。

この漫画は本文とは全然関係ありませんが、おもしろいです。

用語理解の異なる医療語

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同じように、医療用語では下記の項目にイメージが異なると結果が出ている。

  • たくさん(薬の種類、錠数)
  • ご飯を増やす(お茶碗、何杯)
  • 治る確率(%)
  • 助かる可能性(%)
  • 検査結果(正常値の割合%)
  • 障害が残る(介助が必要の割合%)

ここでは療法士にとって重要な2つの用語について取り上げる。

治る確率

  • 医師…48%
  • 医療者…50%
  • 市民…62%

助かる確率

  • 医師…18%
  • 医療者…22%
  • 市民…24%

リハビリ場面においても「治ると思いますか?」といった内容を患者さんに聞かれる機会が多いだろう。それに対して「まぁ、治っていくと思いますよ」という答えを返すと、患者さんからすれば「6割くらいの確率で治っていくかな」と期待するようだ。(実際には言い方や表情、補足説明などの様々な要因が絡むために一概に述べれないが…)

また、「まぁ、日常生活に困らないくらいには歩けるようになると思います」といった表現で患者さんに予後予測を伝える事がないだろうか。

  • 療法士としては何とか伝い歩き…
  • 患者さんからすると以前のように独歩

と、受け取り方が全く異なるときによく遭遇する。思っていることが違うと、治療そのものも上手くいかないことがあるし、訓練の意味合いなども変わってくるだろう。出来るだけ一致させておくに越したことはない。

また「もう少し力を抜いてくださいね」といった、身体に影響する言葉は治療内容にダイレクトに関連するために、より注意したい。(…このあたりの研究は比較的進んでいるように思いますが。)

このように、どうやら医師・医療者と患者さんが思っている言葉のイメージというのはどうやらズレることがたびたびあるようだ。それが現実的にトラブルになることもあれば、何の問題にもならない場合もあるだろう。いずれにしても、無駄な不一致を起こすメリットは無いと思われるので、出来るだけ真の伝わる表現を用いるようにしたい。

そのためには「怪しいな!」と思った時には「どう考えていますか?」と聞く癖をつけたい。確認する方法は、やはり言葉を使う事がてっとり早い。何か変だ、何か怪しいと思ったら、確認していこう。

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