もう脳梗塞・脳出血のリハビリで困らない!評価や治療のポイントを紹介!

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脳梗塞・脳出血の患者さんを担当するけれども、理学療法士としてやらなければならないことがたくさん…一体何をしていいか分からない!困った!

という新人・若手理学療法士は少なくないのではないでしょうか?

そこでこの記事では、脳梗塞・脳出血を呈した患者さんに対する理学療法の進め方や診方のポイントを紹介します。複雑な脳血管障害もシンプルに捉えなおして、理学療法を適切に展開していきましょう!

まずは病期から考えてみよう

Alexas_Fotos / Pixabay

脳卒中のリハビリは時期によって行うことが異なります。おおまかには3つに分類されていて、それぞれに行う事は少しずつ違います。

  1. 急性期
  2. 回復期
  3. 生活期

では、それぞれでは何を行うのでしょうか?

1.急性期リハビリ

リスク管理と早期離床を!

急性期とは脳卒中になった直後~2週間程度の時期を指します。この時期に脳そのものの回復が生じるために、リハビリはその回復を阻害しないことが大切になってきます。

脳の回復過程についてはこの記事を参考にしてみてください。

脳卒中の回復過程はどのようなメカニズムか?

2017.01.03

リスク管理

また発症直後は合併症や再発のリスクがあるので、ドクターにリハビリをどのように行ってよいのかを確認しながら進めるようにしましょう。ひとまずは血圧・脈拍・酸素状態といったバイタルサインの基準、離床開始時期(いつから座位訓練、立位訓練を行ってよいのか)について確認しましょう。一般的なアンダーソンの中止基準を参考にするのはもちろんのことですが、急性期はより繊細な管理が求められます。病院によっても異なるはずですし、必ずドクターと相談しましょう。

土井・アンダーソンの基準
Ⅰ.運動を行わないほうがよい場合
 1)安静時脈拍数120/分以上
 2)拡張期血圧120以上
 3)収縮期血圧200以上
 4)労作性狭心症を現在有するもの
 5)新鮮心筋梗塞1ヶ月以内のもの
 6)うっ血性心不全の所見の明らかなもの
 7)心房細動以外の著しい不整脈
 8)運動前すでに動悸、息切れのあるもの
Ⅱ.途中で運動を中止する場合
 1)運動中、中等度の呼吸困難、めまい、嘔気、狭心痛などが出現した場合
 2)運動中、脈拍が140/分を越えた場合
 3)運動中、1分間10個以上の期外収縮が出現するか、または頻脈性不整脈(心房細動、上室性または心室性頻脈など)あるいは徐脈が出現した場合
 4)運動中、収縮期血圧40mmHg以上または拡張期血圧20mmHg以上上昇した場合
Ⅲ.次の場合は運動を一時中止し、回復を待って再開する
 1)脈拍数が運動時の30%を超えた場合、ただし、2分間の安静で10%以下にもどらぬ場合は、以後の運動は中止するかまたは極めて軽労作のものにきりかえる
 2)脈拍数が120/分を越えた場合
 3)1分間に10回以下の期外収縮が出現した場合
 4)軽い動悸、息切れを訴えた場合

基礎疾患として糖尿病や高血圧を有している方が少なくありません。必ずカルテを確認してから患者さんを診るようにしましょう。

早期離床

臥床期間があると、それだけ体にとっては悪いことが多いです。

  • 筋力低下
  • 呼吸状態低下
  • 関節可動域制限の出現
  • 褥瘡の発生

そのため、どのような患者さんであっても出来る限り離床を図ることが必要になります。リスク管理として問題がなければ、意識障害のある患者さんへも長下肢装具などを用いて歩行訓練をすることは有効な理学療法です。

『とにかく起こす!』を頭に入れながら理学療法を展開するようにしましょう。

同時に評価も、忘れずに行っていきましょう。内容については学校で習う基本的なもので十分です。

  • 機能への評価:関節可動域、筋力・運動麻痺、感覚障害、筋緊張、周径
  • 動作への評価:基本動作能力の程度…自立度、質(座位保持時間や歩行介助量など)

もちろん、一口に急性期といっても、様々な症状の患者さんがいます。重症で意識状態がなかなか戻ってこない人から、投薬によって症状がほとんどなくなる人まで。それぞれの状態に合わせて、下記の回復期で行うようなリハビリも実施していってください。

2.回復期リハビリ

機能回復に加えて、より生活を見ていこう!

回復期になると定義上は全身状態が安定していますので、どんどんリハビリ介入を行っていきましょう!(とはいえ、現実的には重度の合併症が継続したまま回復期に移行する方は少なくありません。状態によっては全身管理が中心になる患者さんもいます)

病態としては機能障害が回復していき、それに伴って生活行為や社会参加も見えるようになってきます。包括的な視点から関わっていくことが必要です。

しかし、全ての患者さんが同じように回復していくわけではありません。脳の損傷程度や部位によって、予後が大きく変わってきます。そこで、「脳画像・患者さんの経過」を合わせて、どのあたりまで心身機能が回復して、どんな生活が出来そうかを考えるようにしていってください。

脳画像を何で?と思ったらこちらの記事を参考にしてみてください。

療法士が脳画像を診る必要性とは?

2017.01.02

3.生活期リハビリ

生活を中心にしながらも「治る」を目指す!

世間的には回復期リハビリを終了すると、脳卒中の回復は生じないと考えられています。そのため、今の心身機能を維持し、より生活出来るように工夫していくことや、社会参加出来る場所を探していくことになります。両方面からリハビリを考えていきましょう。

活動・参加

  • 患者さんがやりたい事は何か?
  • 行えれば楽になる生活行為は何か?
  • 介助者が負担になっている行為は何か?

このような観点から、患者さんの生活や参加を評価していってみましょう。なかなか理学療法の分野ではこのあたりを包括的に評価してくれる尺度のようなものはないので、まずは患者さんや家族さんに聞いてみることにしましょう。じっくりと話していけば、実はすんなり介入すべきポイントが分かってくるものです。

心身機能

まずは維持できるように努めましょう。回復期リハビリでは一日3時間近くのリハビリが行われるため、廃用症候群のように弱っていくことはあまりありません。しかし自宅や施設に帰ってみて生活すると、少しずつ弱っていく方が少なくありません。

生活の中で心身機能を維持できるような行為はないかを探してみましょう。

  • 自主トレーニングを指導する
  • 洗濯を自分でやってみるようにする
  • デイなどに出かける機会を増やす

ポイントとしては「理学療法士がやってしまわない」ということです。ついつい私たちは触って治すことに主眼を置きがちですが、それだけでは時間が足りないのが生活期です。患者さん自身がリハビリ出来るように環境を整えたり、宿題を提供したり…「この前会った時よりも良くなってますね!」と言えるような生活づくりを目指していきましょう。

理学療法評価は何をすればいいのか?

hamiltonpaviana / Pixabay

さて、病期によるおおまかな方向性を知ったところで、理学療法評価について考えていきましょう。

回復期リハビリを想定しながら読んでいただけると幸いですが、実は急性期でも生活期でもやることは一緒なんです、様々な状況が違うから結果的に違う事をやるのですが、プロセスは一緒なのです。

情報収集

まずは患者さんの病態についてを知りましょう。

医学的情報

下記の5項目を押さえておくと「こんな感じでリハビリが進んでいくんだな」ということがぼんやりと見えるようになります。特に治療方針・期間・目標は重要になります、カルテに記載がなければ必ずドクターに確認しましょう。

  1. 診断名
  2. 入院日・発症日
  3. 服薬状態
  4. 治療方針・治療期間・治療目標
  5. 脳画像・血液検査・心電図・呼吸機能

画像については難しいですが、必ず見ておきましょうね!

社会的情報

次に患者さんの個人的な情報についても聞いておきましょう。特に自宅復帰を目指す患者さんでは家族や家屋の状況が非常に大切になってきます、必要ならば担当してすぐに家屋調査に行くようにしましょう。介助や環境によって行うべき理学療法は違いますからね(世の中には超~お金持ちで何でも出来るような人から、築100年くらいのバリアだらけの家に住む人まで様々います)。

家族の希望は「トイレに自分でいければ、何とか家で」と最初言っていても、次第に変化していくこともあります。「トイレだけじゃなくて、セルフケア全部自立しないとダメだったの!?」と後から気付くことも少なくありません。定期的に家族の希望を聴取するようにしましょう。

  1. 家族構成
  2. 家屋状況
  3. 病前の心身機能や社会参加の状態
  4. 患者さんや家族の希望

患者面談のポイント

患者さんに意識障害、高次脳機能障害があっても、丁寧な面談を心がけましょう。医療者は心身機能が弱ったり、動けなく介助を受ける患者さんのことを無意識に下に見がちです。その結果、年上のはずの患者さんに対して敬語でなくてため口を使う療法士もたくさんいます。

患者さんは分かっていないように思うかもしれませんが、ちゃんとわかっています。意識障害があっても「あの時、こんなのだったよね?」としばらくしてから教えてくれることも少なくありません。必ず丁寧に!です。

医療者である前に社会人、社会人としての正しい振る舞いを必ず押さえておきましょう。現場ではなかなか教えてくれないので、まずは書籍で自己研鑽してみてください。

心身機能の評価

必ず基本的なものを行っておく!

脳卒中に対する評価というと難しく考えてしまいがちですが、必ず基本的な検査測定は必要になってきます。

  • 筋力
  • 関節可動域制限
  • 運動麻痺
  • 感覚障害
  • 形態測定
  • 筋緊張

脳卒中患者に対しては様々な理学療法テクニックがありますが、それらを行う前にまずは基本的検査測定です。これが出来ないのにテクニックを行って、周りの療法士と共有出来ないのは問題ですし、説明出来ないのはもっと問題です。適切な検査測定を行っていれば、それで大丈夫ですよ!

基本的動作の評価

まずは自立度、次に質を!

しかし動作の評価となると少し難しくなってきます。特に歩行観察なんて苦手な理学療法士がたくさんいますよね…学校でも実際の患者さんを診ながら評価を進めることはほとんどないですもんね。

そこで筆者は、まず自立度を判定して、次に動作の質を診ることが理解しやすく簡単だと考えています。

1.自立度

言葉の通り、自立?介助(口頭指示、軽、中、重、全)?を評価します。

あまり難しく考えすぎず、どんな職種の人でも理解出来るように評価しましょう。

  • 「この患者さんの座位は自立です!」
  • 「移乗は軽介助で、片手を添える程度で可能です!」
  • 「歩行は重介助で、装具をつけて両手で抱えないと難しいです!」

と、まずはこのような具合から押さえていくようにしましょう。ついつい「腹筋群の筋緊張が低下しているから、肩甲帯の位置が…」と細かいところにいってしまいがちですが、そこに行く前に自立度にいきましょう。

2.質

次に質について考えていきます。といって難しいですよね、筆者はまずは全体的に眺めてみて、そこから特徴的な場所を探すようにしています。そして、実際に気になった場所を触ったり、患者さんがどう感じているかを聴いたりしてみます。

  • 座位を全体的に眺めてみる…「なんだか右に傾いているなぁ…下肢から腰部にかけては水平で…あ、右の肩甲帯が少し左右差があるから傾いているように感じるんだな!」なんて具合です。
  • 「右の肩が下がっているのですが、〇〇さんはどう感じますか?」→「え?まっすぐになってるつもりだけど、本当に!?」→「そうなんですよ、ちょっと鏡をみて確認してみましょう!」

動作の質は、なかなか観察しているだけでは分かりません。なぜなら、観察から分かる問題は「問題点の仮説」でしかないためです。だって、人が傾く理由なんて山ほどあるでしょ?心身機能が問題なくても座面が傾いてたら傾くし、右に傾いてやろう!と思えば傾きますもん。

なので、質を評価する際には必ず介入をセットにしてください。触りながら、話しながら進めることで問題点が見えてくることが非常に多いですよ。

…とはいえやっぱりちゃんと学びたいもの、まずは書籍でしっかりと知識をつけて、患者さんで応用していくようにしましょう。

理学療法評価から、目標設定をしよう!

geralt / Pixabay

さて、ここまで理学療法評価を行ってきましたが、これは全て目標設定を行うためにあります。

  • 一ヶ月後に移乗自立する
  • 三ヶ月後に歩行自立する
  • 一ヶ月後に装具なしで歩ける
  • 三ヶ月後に歩いて映画館に行ける
  • 六か月後に自分でリハビリ出来るようになっている

このように心身機能・基本動作・社会参加を並列に考えながら、目標を設定していくようにしましょう。

とはいえ、むやみやたらに希望を聞いて目標を立てるのではありません。患者さんの状況に合わせて、適切な目標を立てるのが理学療法士の役目です。そのために理学療法評価を複合的に組み合わせていきます。

筆者が評価するときは公式のようなものを使って考えています。

発症前の患者状態+病態(画像・合併症)+現状の患者状態と経過+想定される社会資源±その他因子

発症前の患者状態

  • めちゃめちゃ元気にバリバリ働いていた男性
  • 90歳でベッドとトイレの往復程度を何とか行っていた男性

では、そもそもの状態が違いますよね。後者の男性がどれだけリハビリを頑張っても、おそらく100m歩けるようになるのは難しいでしょう。一方、前者の男性であれば体力もあってきついリハビリに耐えれるので、比べると元気に退院する姿が想像できます。

病態

  • 運動麻痺が重度に出現する場所の脳梗塞
  • 感覚障害が重度に出現する場所の脳梗塞

これらはその梗塞部位だけで大きな違いがあります。それだけ脳の病態は大切です。発症時の状態だけでなく、長期的な経過についても予測が立ちます。必ずチェックするようにしましょう。

この点については実際の画像を見ながら学んだ方が分かりやすいものです。筆者のお勧めはこちらの一冊です、分かりやすくてしかも安い…買っておいて損はないでしょう。

現状の患者状態

おおまかには画像によって、どのような症状が出るのかを判断できるものですが、実際には「え!?」と思う事は少なくありません。運動麻痺重度だと思ったのに、症状ほとんどない!なんて経験はよくあります。画像から導き出せるのはあくまでも「仮説」と思って、その仮説に準じて評価を進めながら、実際との違いを見るようにしていきましょう。

また、経過をみていくことも必要です。仮説通りに治っているのか?思ったより遅いのか、早いのか?経過が思ったより遅ければ目標を下げて検討しなければいけませんし、早ければ目標を高く設定してもいいでしょう。

想定される社会資源

「だいたいこれくらいの生活が出来る」と思った時に、それを実現出来る環境で患者さんが生活出来るようにしておかなければなりません。車椅子自立レベルを想定していて、自宅が段差だらけで、階段を昇らなければならない…そんな状況にならないようにしましょう。自宅改修は可能か?介助してくれる人の時間やパワーは適切か?などなど。

目標設定で必ず考えておきたい事

「え~そんな目標設定なんて出来ないよ…」という新人療法士に筆者はたくさん出会ってきました。画像も分からないし、患者さんの治療経験も少ないし、治っていく過程もイメージつかないですものね。出来ないのが当然です…が!それでもやってみる、のがとても大切です。

目標設定する経験がなければ、経験値が上がりません。

  • 画像のどこを読み間違えたのか
  • 理学療法評価の何が足りなかったのか
  • 家屋情報の聴き漏れは何だったのか
  • 自分の理学療法が悪かったのか

目標設定しなければこれらに気付くことが出来ません。

分からないからこそ目標設定する、そして間違いから学び、次の精度を上げる!ここに目標設定の醍醐味があります。筆者ももう9年現場で働いていますが、だんだん目標設定の精度が上がってきました。小さな積み重ねの結果です!

実はこういう考え方を伸ばすには、理学療法とは少し違った領域について勉強するのも大切なのです。こんな本も読んでみてくださいね。

理学療法介入:治療と再評価はこう行う!

geralt / Pixabay

目標設定出来れば、そこに向かっていくだけです!

  • 歩けるようになる→歩行練習、歩くための機能訓練
  • 移乗出来るようになる→移乗練習、移乗出来るための機能訓練

このように考えていきます。「えっ、そんなのでいいの?」と思うかもしれませんが、いいのです。だって、目標決めるにあたって介入すべき部分は出てるんですから、今更考えなくたっていいんです。すでに正しい方向に向かって動いているから大丈夫です!

ここで気をつけたいのは、再評価を必ずすることです。

  • 6カ月で歩行自立いけると思ってたけど、経過を見てると間に合わなさそうだ…
  • 入院期間中には車椅子での日常生活が行えるようにして、歩行は退院後に目指そう…!

このように適宜修正していくことが大切です。理学療法士は一度目標を決めると、そこに没頭してしまって抜け出せなくなる時があります。完璧な目標設定なんて出来るわけないのですから、その場その場で修正するのを習慣化しましょう!

脳梗塞・脳出血のリハビリにおすすめの本10+2選!

この記事ではおおまかな考え方を紹介しました。この考え方が基盤にあると、迷うことがめちゃめちゃ減ってきます。「あ、目標高すぎたからうまくいってないんだな」「もう少し目標上げても大丈夫かな」と、目標から考えれるようになると、すごく良い理学療法が展開出来るようになってきます。

とはいえ、個別の細かい評価方法や考え方は補強しなければなりませんので、そんな時には下記の書籍を参考にしてみてください。10冊に絞って紹介してみます!詳細はアマゾンの紹介を読んでもらう方が早いと思いますので、そちらで確認してみてくださいね!

+αとして、高次脳機能障害になられた男性の奥さんが書かれた漫画があります。非常に分かりやすく親しみやすいので筆者も読んでいますし、家族に勧めることも多いです。こちらもぜひ。

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