脳卒中患者の歩行における代償動作はダメ?…実は良い場合もある!代表的な異常歩行と合わせて解説!

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どうも~きた(@rehamame)です。

先日、PT-communicationsの歩行セミナーで非常に興味深い質問を受講生からいただいたのです。

「歩行練習している時に代償が出ていると、先輩からの視線がキツくて…代償動作ってやっぱりダメなんですかね( ;∀;)?」

確かに…!

私にもそんな時期がありました。「代償動作を出すなんてダメ…!悪だ!理学療法士として恥!羞恥心!」みたいなことを思う時代、ありました。

たしかに「代償動作=悪」みたいなイメージをどうしても持っていると思うのですが、実はそうではないのですよ。状況によっては「代償動作=ありがとう!」みたいに必要なこともあるのです。

この記事では脳卒中患者の歩行を中心に「悪い代償動作」と「良い代償動作」について考えてみます。あとついでに代表的な異常歩行の紹介もします(*´ω`)

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この記事の目次

代償歩行(back knee)によって安全な歩行を行っていた私の祖母

昔は歩けていた祖母のお話

私の祖母は出血性梗塞を起こした後に大腿骨頸部骨折を受傷し、現在車椅子生活です。

しかし、出血性梗塞を起こした後の数年間は独歩で公園をウロウロ出来るくらいでした。それはどれもこれも代償動作のおかげだったのです。

祖母の心身機能と歩行

当時の状態をざっと説明すると…

  • 重度運動麻痺
  • そこそこ認知機能悪め
  • オルトップで杖なし
  • 麻痺側立脚期はガンガンback knee
  • 骨盤は後退しまくり
  • 足関節拘縮できまくり

というような状態でした。

祖母が独歩していた当時は、私は学生だったので…

  • 「関節拘縮許さぬぞ!」
  • 「骨盤後退許さぬぞ!」
  • 「back kneeなんてもってのほか!」

と思って、自分なりの運動療法を自宅で繰り広げていました。繰り広げていた…とか言いながらも足関節のストレッチをひたすらにやって「痛いー!」と言わせていただけなのですが苦笑。

担当の理学療法士さんは「あえて」back kneeを選んだ?

どれだけ「正常歩行を目指そう!」とか言ったところで、現実的に祖母の運動麻痺は重度なままですし、認知機能もそこそこ悪い…。

到底、正常歩行なんて目指せるレベルではないのですよね。

となると、その状態を抱えたまま歩行を獲得させる手段として、代償動作を用いることって「あり」なんです。その1つとして、back kneeで歩く事って選択肢としてはめちゃめちゃ「あり」なんです。

もし、当時の担当理学療法士が「いや、やっぱり正常歩行だ!」なんて思って「立脚期には膝軽度屈曲位で…」なんて正常歩行に近づけさせる練習ばっかりしてたら、きっと中途半端で実用性の無い歩行…ガクガクと不安定性の高い歩行…長下肢装具なしでは歩けずに移動は常に車椅子一択…なんてこともありえたのです。

「この患者さんが自宅で歩くためには、絶対にback kneeしながらじゃないとダメなんだ!」と判断してくれたからこそ、自立して独歩が出来たと思うのです。

代償を選ぶのは「適切な予後予測」があるから。

しかし、むやみやたらに代償を許容すべきではないですよね。

祖母の場合には重度運動麻痺と認知機能の低下を加味した上で「よし!」と選択したのだと思うのです(もし何も考えずに歩かせてただけなら…結果オーライwww)。

発症した時の脳画像を見て、理学療法評価を実際に祖母に対して行って、経過を照らし合わせながら…「この人は長期的にも運動麻痺が改善しない」という予後予測を立てたので、back kneeという代償動作を許容した歩行の獲得を目標として立てたのです。

うむーすごいですよね。

このすごさを理解出来たのは3年目くらいのときで、それまでは「正常歩行に到達できなかった下手くそPTのせいだ!」とか思っていました。私は臨床に出るまで「理学療法士が上手ければ全ての運動麻痺は治せる!」と信じていたので…苦笑。

祖母には代償動作が必要だった!

このように考えると、祖母は代償動作を「あえて」行う事によって、安全で自立した歩行を獲得することが出来たのです。

「代償動作=悪」ではなくて「代償動作=ありがとう!」です。

臨床で働いていると患者さんの中には、私の祖母のように代償動作を用いることで安全に安定した歩行動作を獲得している人ってたくさんいるのです。

「代償動作」を許すor許さないの評価は?

やっぱりどんなときも「評価」が大切!

さて、少し触れましたが代償動作を選択して良い場合と悪い場合があります。それをどのように評価していくのかを考えていきましょう。

「良い代償動作」とは、私の祖母のように心身機能の十分な回復が見込めない場合です。祖母のように、代償を用いることによってようやく安全な歩行を行える時には積極的に用いていって良いと考えています。

一方で「悪い代償動作」とは、心身機能の十分な回復が見込め、正常歩行(に近い歩行)を目指すことが出来るような場合です。代償を用いることによって、本来獲得出来ていたであろう機能的な歩行を獲得出来なくさせてしまうような時には代償動作は出来る限り抑えるべきでしょう。

これをはっきりとさせるためには「この患者さんが今後どのような心身機能になっていくのか?」を理解出来なければなりません…つまり「適切な予後予測」が必要となってくるわけです。

え~予後予測ってなんかムズイよ( ;∀;)という声が聞こえてきそうですが、確かにムズイです…9年目の現在も毎日「ほんまに合っとるんかいな…!?」と悩むことが多いです。それでも一年目の新人療法士の頃から予後予測する力を鍛えてきたので、段々と外れなくなってきました。

さて、予後予測をどのように行っていけば良いでしょうか?私は四つの要素を掛け合わせることによって段々と外れなくなってきました。

  1. 発症前の状態
  2. 病態(画像や血液データなど)
  3. 理学療法評価
  4. 経過

それぞれについて解説していきます(*´ω`)

Ⅰ.発症前の状態

そもそも発症前から正常歩行(に近い歩行)を行っていなかった可能性は多分にあります。

だって療法士の関わる患者さんって多くが高齢者で何らかの疾患を抱えていたり、加齢による変化によって「おおお、すごい歩行だ!」という場合が少なくないためです。

例えば農作業をずっとしていた患者さんであれば、そもそも次のような姿勢ではないでしょうか?

  • 強烈な円背で前も向けないくらい
  • 股関節伸展制限はもちろんバリバリ
  • 例え股関節伸展制限がなくっても伸展域での伸筋は全然効かない
  • 円背に伴って上肢の可動域制限もバリバリ
  • いやいや、側弯だってなかなかに強烈
  • 踵接地なんてもちろんなくて
  • 常にすり足状態

このように文章にすると「いやいや~そんな人はさすがにいないでしょう~!」と思うかもしれませんが、実際に農作業をずっとされていた方ではこのような姿勢を呈する方は少なくありません。(あなたが勤めている地域の特性もあります…農業を行っている地域なのか、街中なのか…とかね)

こんな姿勢の患者さんが脳卒中になって、「さぁ、リハビリで歩けるようになろう!」と思っても、そもそも教科書に載っているような綺麗な歩行なんて獲得できるはずないのです。

その患者さんにとっての「一番適した歩行」というのは円背姿勢でもそれなりにシャキシャキと歩ける、ということです。ピシッと姿勢よく!なんてわけではないのです。

もう少し考えてみましょう。

  • 元々、シルバーカーで何とか自立歩行
  • 元々、杖を使って何とか自立歩行
  • 元々、装具を使って何とか自立歩行

このような高齢者が脳卒中になった場合に、独歩でシャキシャキと!なんて考えないですよね?頑張ってもシルバーカー…杖…装具…という歩行しか獲得できません。

色々と書きましたが、基本的には発症前の状態を越えることは出来ません。その点を考慮することが予後予測の第一歩になります。

Ⅱ.病態(画像や血液データなど)

すごく単純な話なのですが、病気の重い軽いというものが現実的にはあります。

「脳梗塞」と一口に言っても、数時間で何もなかったかのように回復するものもあれば、命を奪ってしまうものもありますよね。

運動麻痺一つとっても同様に、重い軽いがあります。

(ここでの重い軽いとは、重度や軽度という意味です。軽度の運動麻痺であっても重いと表現される方もたくさんいますので気を付けましょうね( ・`д・´))

皮質脊髄路って覚えてますか?

運動繊維がばーーーーっと走行している部分です。あの部分がダイレクトにしっかりと脳梗塞によってダメージを受けてしまうと、やっぱり運動麻痺は重度になります。一方で皮質脊髄路にダメージが全くなければ、やっぱり運動麻痺はほとんど生じません。(もちろん例外はありますよ)

脳梗塞の患者さんを担当してMRIを脳外科のドクターに解説してもらうと「この患者さんは良くなるから大丈夫だよ」とか「この患者さんは厳しいねぇ…」とか様々なコメントをしてもらえると思います。それって脳の機能をはっきりと理解しているので、どこにどれくらいのダメージがあると、どのような障害が出てくるかをはっきりと解説出来るのですよね。

療法士であっても脳画像に関してはみれるに越したことはありません。予後予測をして生活をプロデュースするのは療法士ですから、そのために画像を見れないと困りますもんね。(常にドクターが解説してくれたら嬉しいのですけれども、そうはいかないですし…)

私が初学者におススメするのは下記の一冊です。非常に分かりやすくまとめていて読みやすいので、ひとまず入門書として買ってみると良いですよ(*´Д`)

さて、最近では「脳はシステムだ!」という考え方もあって、「被殻出血だから〇〇だ!」とか「視床出血だから✕✕だ!」という見解を示すのはナンセンスだという話があります。正直私自身も脳の機能局在に基づいて「脳卒中の障害部位=発生する症状」というのに疑問を持っています。

そこで私はおおまかには脳の機能解剖を理解した上で「この場所にこの梗塞巣ならこんな症状」というように画像をそのまま画像として記憶するようにしています。そしてたくさんの患者さんの画像を頭に入れた上で「あの患者さんの画像に似ている…うむ、だから症状も似ているはずだ!」というように理解するようにしています。

私は、機能解剖などについて理解しながらも、MRIやCT画像を「イメージとして記憶して、症状とマッチングさせる」作業を行っていくべきと考えています。

おっと、少し脱線しましたね。

つまり、脳卒中患者さんを担当した時には「この画像だからこんな症状になる!」という予後予測を立てることが必要になります。

そこに「Ⅰ.元の心身機能」を掛け合わせると、より詳細な予後予測を立てることが可能となります。

この節では脳画像について考えましたが、内部障害や骨折に関しても同様に考えます。「この肺はこんな予後だな…」とか「この骨折はこんな予後だな…」とか考えていくので、一緒なのです。

Ⅲ.理学療法評価

ふむふむ!「元の心身機能」と「病態」が分かれば完璧なんだな!と思うかもしれませんが、そんなに思った通りにいかないのが実際の患者さんです。

思いもよらない症状を呈していることがたくさんあります。

  • 「え、思ったより麻痺ないじゃん!」
  • 「まじ!?思ってたより重度!」

こんなことがあります。なので、あなたの立てた予測が合っているのかどうかをはっきりさせるためにも、理学療法評価をしっかりと行わなければならないのですよね。

理学療法評価は普通に理学療法評価を行いましょう(*´ω`)

Ⅳ.経過

さて、さらに大切になってくるのが経過です。

元の心身機能+病態+理学療法評価で「よし!」と思っても、なかなか予測とばっちりになっているかは分かりません。

やっぱり最後は経過を見ながら照合していくことが必要です。

「え~経過だったら、Ⅰ~Ⅲはいらないじゃん!」と思うかもしれませんが、そうではありません。

Ⅰ~Ⅲより導き出される予後予測では、最終的な予後予測だけでなく一週間後、一ヶ月後、三ヶ月後…と様々な時期の予後予測をしていきます。

そこに経過を重ね合わせていきます。

  • 一週間後…よし実際に予想通りだな!
  • 一ヵ月後…あれ、ちょっと遅れてきたぞ!
  • 二ヵ月後…ああああ、だいぶ遅れてきた!

こうならないように、細かい期間で予後予測をして、長期的な予後予測も適宜修正していくのです。

  • 一週間後…よし実際に予想通りだな!
  • 一ヶ月後…あれ、ちょっと遅れてきたぞ、二ヵ月後の予後予測を変えよう!
  • 二ヵ月後…よし、修正した予後予測にばっちりだ!

というような具合です。

私はこのように四つの因子を重ね合わせることで予後予測を行っていて、実際にそこそこ上手く臨床が回っています。あなたもこれを参考にしながら、オリジナルの予後予測の方法を作ってみてください。

そして、目の前の患者さんに…

  • 代償動作を含めて歩行を獲得させるべき
  • 代償動作を行わせずに歩行を獲得させるべき

を決定していってください。

そして予後予測に関してはしっかりと清書を読みながら知識を補充していきましょう!

この書籍はあなたの力になること間違いなしなので、必読ですよ(*´Д`)

脳卒中患者さんにおける代表的な異常歩行

脳卒中の歩行特性を掴んでおこう!

最後に脳卒中患者さんによく見られる異常歩行について説明していきます!

(その前に)歩行分析のおススメ本

異常歩行について語る前に、目の前の歩行をしっかりと分析出来なければなりません。

そこでいくつかの書籍を紹介しておきます(*’▽’)

観察による歩行分析

私の中では歩行分析と言えばこの一冊です。

二年目くらいの時に分かりやすいイラストに衝撃を受けて読み漁っていました。

視覚的にイメージしやすく、割とパラパラ~と読めます。

「とりあえずイメージを掴みたい!」という方にお勧めの一冊です!

ペリー歩行分析原著第2版正常歩行と異常歩行

歩行分析と言えばやはり「ペリー」です。

この書籍はタウンページくらいの分厚さで、細かく様々な内容が記されています。

その分読むのは少し大変ですが、得られる知識の量はハンパないです。

「おれは歩行をマスターしたいんだ!細かいことも教えてくれ!」という方にお勧めの一冊です!

姿勢・動作・歩行分析 (PT・OTビジュアルテキスト)

最近の中ではずば抜けた良書です。

非常に文章も読みやすく、初学者から復習に使いたい中堅・ベテランまでもカバー出来る内容です。

色々読みましたけど、個人的な一位です。

そして何より「動画付き!」です。パッとイメージするには最適です。

「まずは歩行の実践レベルの知識と技術を身に付けたい!」というパーフェクトな一冊です!

脳卒中患者における立脚期の異常歩行

ここからは代表的な異常歩行です。

その紹介と押さえておくべきポイント(原因や対応方法)について触れていきます。

【トレンデレンブルグ歩行】

異常歩行と聞いて一番最初に思い浮かべるのがトレンデレンブルグ歩行ではないでしょうか?

この異常歩行は「外転筋の筋力低下によって生じる」というイメージが強いと思いますが、実はそれだけではありません。

というのも、外転筋の筋力低下がそこまでない症例においても、トレンデレンブルグ歩行を呈す人はけっこーいます。

外転筋の筋力低下以外が原因となる場合は、2つ考えられます。

《原因①:外転筋の立ち上がり速度の低下》

立脚期において外転筋の出力が求められるのって一瞬のことなんです。「いっ…今ッ!!!」というくらい歩行においては一瞬。

なので、外転筋もそのタイミングに合わせて筋出力を「グッ!」と発揮させなければなりません。この発揮が遅れてしまうことを「立ち上がり速度の低下」と呼びます。

私の臨床経験では、瞬時に力を発揮するようなトレーニングを行います。少しずつ歩行に近い形態へと段階的に高めていくことで(ベッド上で早く外転させる練習→ステップ練習で促す)、歩行場面においても改善を見込めることがあります。

《原因②:いわゆる「クセ」になっている》

筋機能としては十分に使えそうなのに、トレンデレンブルグ歩行が定着してしまっているケースです。

これから紹介する異常歩行の全てに当てはまることですが、「そんな異常歩行出さなくても歩けるのに!」と思う症例ってたくさんいます。これって多くは「クセ(誤った歩容が学習されてしまっている)」になっているので、少しずつ修正していく必要があります。

このあたりについては運動学習の勉強をしていく必要があります。

運動学習に関するおススメ書籍は次の2冊です、是非とも読んでおきましょう!

『運動指導の心理学』

運動学習の基本について学生でもイメージしやすいように書かれた一冊です。

アマゾンの中古で非常に安く売られているので、一冊は手元に置いておきましょう。我が家はなぜか3冊あります。

「運動学習ってなんやねん?」と思わず関西弁になってしまうほどの初学者の方にお勧めです。

『運動行動の学習と制御―動作制御へのインターディシプリナリー・アプローチ』

私が運動学習関連のトピックをセミナーで喋る際に、いつも参考書籍として紹介する一冊です。

少し難しいところもありますが「なるほど!」がたくさん出てきて非常に分かりやすい一冊です。

「運動学習って何となく分かってきた、もう少し深めてみよう!」と思う方にお勧めです。

【膝折れ(giving way)】

これは立脚期で最も脚が体重を支持する瞬間に「ガクッ」と膝が折れてしまうことを指します。

ACL損傷などでよく聞くものですが、片麻痺患者さんでもみられることが多いものです。

これは大腿四頭筋の筋力低下によって生じます。

*脳卒中患者さんに「筋力低下」という言葉を使うのが適切かどうか…という議論は置いておきます。イメージしやすいように筋力低下にします。

《脳卒中患者さんにおける膝折れの特徴と対策》

臨床場面において問題になるのは、「常に膝折れする人」と「たまに膝折れする人」です。

特に「たまに膝折れする人」に関しては「なかなか自立度が上げれないなぁ…」と悩んでしまうものです。

私の経験では、「歩き始め」もしくは「疲労」によって膝折れを呈す方が非常に多いです。

その対策としては

  • 歩き始めに膝折れを呈す人:足踏みや立ち座りを反復して、足の準備状態を整える
  • 疲労で膝折れを呈す人:連続歩行距離を短く設定し、歩行練習や指導を行う

脳卒中患者さんと関わる際には筋活動や歩容を気にすることが多いですが、このような対策を患者さん自身にしてもらうように促すことも大切です。

同じ身体機能で同じ歩行レベルでも「自立出来るか出来ないか」は、管理能力にかかっている場合があります。チェックするようにしてみましょう。

【反張膝(back knee)】

これは立脚中期以降に膝が過伸展してしまう状態のことを指します。

その原因として遭遇しやすいものは下記の3つが挙げられます

  • 大腿四頭筋が力を発揮しきれずに「抜ける」ように生じる
  • 下腿三頭筋が過剰に働きすぎて下腿を固定してしまう
  • 足関節の可動域制限が強く、下腿の前傾が出来ない

私の祖母はこの3つが全て該当しているような状態であったので、反張膝が不可避でした。

それぞれへのアプローチを概説しますね。

《介入①:大腿四頭筋の収縮を促す》

単純に「力が入る」ように促す事が必要です。

脳卒中患者さんにおいては課題思考型アプローチというものが非常に大切になってきます。

これは「出来るだけ実際の様式に近い形で練習しよう!」というものです。

反張膝へアプローチする時には…

  • 実際の歩行場面で
  • 難しければステップ練習などの近い様式で
  • 全然出来なければ筋トレのような形から歩行に少しずつ近づけて

これらをイメージしながら介入していきましょう。

課題思考型アプローチに関しては下記の書籍がおススメです。一度目を通しておくとよいですよ。

《介入②:下腿三頭筋の過剰な収縮を抑制する》

過剰に収縮してしまう原因を探してみましょう。

  • 実は立脚期が不安定で怖くて力が入ってしまう
  • 支持しなければいけない!と一生懸命になって過剰に力を入れてしまう
  • 腓腹筋とヒラメ筋が一緒になって収縮してしまう

このような場合には理学療法によって改善させることが可能な時が多いです。

  • どんな動きにおいても下腿三頭筋が収縮してしまっている

このような場合の時にはなかなか改善させることが出来ません。悩んでしまいます。

いずれの場合においても、私は次のようなアプローチをとることが多いです。

座位や立位から下腿三頭筋に過剰な収縮が入らないように段階的に練習して、次第に歩行に近付けていきます。

簡単なことから練習していって、段々と難しいのもマスターしてもらうのです。

これも課題指向型アプローチを基にした介入です。

こちらの本もおススメなので読んでおいてくださいね。私は激読みしました。

《介入③:足の可動域制限を改善する》

イメージしやすいパターンですね。

足関節の背屈制限があると下腿の前傾が出来ないため、膝より上を前方に移動させるために反張膝になるというもの。

介入としてはベタですが、下記のものは有効です。

  • 徒手でストレッチをかける
  • ストレッチボードなどの器具を用いてストレッチをかける

ただ、臨床場面においては「ストレッチしてもすぐに戻ってしまう…」という場合が少なくありません。

そのような場合の多くは下腿三頭筋の過緊張に基づいていることが多いので、介入②の要素も頭に入れながら可動域制限に向き合っていかなければなりません。

↑こういうやつね。家にも欲しいわぁ…

【踵非接地】

全身的に緊張が高い患者さんで、たまに遭遇するのが踵非接地。

立脚期のどの相を見ても、ずーーーっと踵が浮いているんです。

《介入①:下腿三頭筋の過緊張を改善させる》

これも反張膝と同様に、下腿三頭筋の過緊張が原因となっている場合がほとんどです。(可動域制限は二次的なので、やはり過緊張!)

なので反張膝への介入②と同様のアプローチで改善を図ります。

とはいえ、なかなか改善を図れない場合(どうやっても緊張が高いままになってしまう!)には、装具を用いることが有効です。

《介入②:装具を用いて改善させる》
  • 金属支柱付きの短下肢装具
  • プラスチック製のオルトップ

などなど、患者さんの足部の状態に合わせて強度を決定しながら適応を探していきます。

臨床上で大切なのは「装具の決定は試しながら考える」ということです。

理論上では適応となる装具でも上手くいかなかったり、その逆もしかり。

実際に履き比べることで、患者さんに一番適応した装具を発見することが出来ます。

少し話はずれますが…

「長下肢装具から短下肢装具への移行の時期は?」

という質問に対して、

「試しながらやらないと決定できない!」

と著名な療法士が講演会で述べていました。著名な人でも試し試しなのですね。

立脚期の次は遊脚期です!

脳卒中患者における遊脚期の異常歩行

【分回し】

脳卒中患者さんにおける遊脚期の異常歩行として最もよく耳にするものですね。

学生さんに「歩行観察してみて!」と言うと「分回し歩行ですね…(・∀・)ニヤニヤ」と自信満々に答える姿によく遭遇します。

この原因の多くは『腸腰筋の筋出力低下』に基づいているものです。

私は分回し歩行については、「良い分回し」と「悪い分回し歩行」があると考えています。

《良い分回し歩行》

良い分回し歩行とは、腸腰筋がどうやっても歩行時に活動してくれない場合です。

本来であれば腸腰筋で下肢挙上を担うべきですが、どうやっても活動しないなら、しょうがないじゃない!

私は「どんな姿であっても歩けることって大切だよ!」という価値観なので、「分回し出来る筋機能があってよかった…」とむしろ感謝します。

重度の弛緩性麻痺の患者さんが歩ける時って、どうしても遊脚期は代償を使わなければなりません。

《悪い分回し歩行》

悪い分回し歩行とは、腸腰筋が活動出来るにも関わらず行っている場合です。

歩けりゃOK!と言いながらも、代償をガンガン使っているとどこかが痛くなったり、別の機能障害を生み出してしまったり…デメリットはあります。

本来使えるはずの腸腰筋を使わないのはナンセンスです( ゚Д゚)!

《腸腰筋の評価方法》

とはいえ、腸腰筋が活動出来るのか否かを判断するのが難しい!という声を聴きます。

私の評価方法はいたって簡単です。

  1. バランスを崩さないように支えながら、立位をとってもらう
  2. 健側に体重支持して、麻痺側を振り出しやすい状況を整える
  3. どんな形でもいいから足を上げるように努力してもらう
  4. 難しければ徒手で誘導したり、視覚でイメージしてもらう

これくらいで足が少しでも上がる人は、歩行時に腸腰筋がちゃんと使える人です。

《分回し歩行の修正方法》

腸腰筋が使えることは分かった!でも分回し歩行が定着してしまってるんだ(*´Д`)

という患者さんに遭遇する事もよくあります。

よくあるケースとして「一生懸命遊脚しようとしすぎ!」というものがあります。

麻痺側下肢の腸腰筋では不可能なほどに遊脚を大きく、早く行おうとすると、別の筋肉が頑張ってしまうのはしょうがないものです。

分回し歩行が定着してしまっている患者さんというのは、少しでも歩けるように努力した結果としてそうなっている場合が少なくありません。

なのでまずは「ふわっと軽く、小さくで良いので足を出してみましょう!」といった声かけを行い、頑張りすぎない遊脚期を作ってもらうことが必要です。

これが出来るとあとは少しずつ腸腰筋を使ってもらって、他の筋を使わないでもらって…段階的に実用的な歩行に近付けていけばOKです。

↑まさにぴったりの本!!!!!

【骨盤挙上・骨盤後傾】

遊脚期に腸腰筋の活動が上手く出来ない患者さんでは、骨盤で代償することもあります。

足を振り出そうと思うと…

  • 骨盤を挙上させる
  • 骨盤を後傾させる

どちらかを行えば見かけ上は振り出せて、歩けますもんね。

私の臨床経験では分回し歩行を用いている患者さんよりも、骨盤で代償して歩いている患者さんの方が厄介です。

というのも骨盤で代償した歩行を繰り返していると腰部の痛みを訴えることが非常に多いからです。

一歩一歩、あんなに大きい骨盤をぐいーっと持ち上げているもんですから、腰が疲れるのは当たりまえです。

出来れば骨盤の代償は最小限にして遊脚期を行って欲しいものですね。

骨盤を代償している患者さんでも、多くの原因は腸腰筋が上手く活動出来ないことにあります。

となると、介入は分回し歩行と同じような手順でOKですね。

↑昔はこの本を目がちぎれるほど読んでいました…。

【内反尖足】

立脚期で問題として挙げられまくった下腿三頭筋の問題は、遊脚期でもやっぱり問題となります。

その代表的なものが内反尖足です。

これも改善しやすいものと改善しにくいものがあります。

《改善しやすい内反尖足》

何もしていない時からずっと内反尖足を呈す患者さんは多くありません。

歩行時や階段昇降時といった、努力しなければ出来ないような課題に直面した時に呈するものです。

となると「患者さんが頑張りすぎないように促せば」抑制出来る可能性が高いです。

  • 「足に力を入れすぎずに歩きましょう」
  • 「軽く置くようなイメージで接地させてみてください」
  • 「足先ではなく、腿から足を出すようにしてみましょう」

といった、足部の緊張を高めないように声かけをしてみましょう。

そんなことで…と思うかもしれませんが、療法士のちょっとした声かけで力の入れ具合は変化するものです。

一度試してみましょう。

《改善しにくい内反尖足は装具療法》

その一方でどうやっても内反尖足が改善出来ない患者さんがいますよね。

そのような場合には装具を用いて対応していきましょう。

おわりに

経験を文字にしていこう!

代償歩行について私の祖母の歩行を思い出して書いてみました。

日々のちょっとした出来事や臨床経験(もちろん書いて良いものに限ります)は、たくさん文字に起こして自分の糧にしていきましょう!

文字に起こす経験が多ければ多いほど、文章を書くのが上手になってきます。思考するのが上手になってきます。

そしてインプットの説明性に駆られて、勉強せざる得なくなってきます( ;∀;)

最後の脳卒中患者さんの歩行については、特徴や原因の『一部』を紹介しました。

臨床で患者さんをみていると「そんな簡単ちゃうわ!」と思う事がたくさんあります。

本や講習会で学んだことを無理矢理患者さんに当てはめるのではなく、「患者さんに当てはまれば応用しよう!」という考え方で臨床に臨むようにしましょう。

それでは(*´ω`)

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