セラピストが知るべき経口栄養・経腸栄養・静脈栄養の知識

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脳梗塞による嚥下障害・肺炎による摂食制限などにより、患者さんは誤嚥のリスクが高まり、経口摂取を制限されることがあります。そこで経鼻チューブのように鼻から栄養投与したり、胃瘻のように胃へ直接的に栄養投与する経腸栄養が行われます。また、消化管が使用できない場合には経腸栄養ではなく、静脈栄養を行います。さて、当然のように目の当たりにしている経口栄養・経腸栄養・静脈栄養について、セラピストはどこまで理解しているでしょうか?この記事ではそれぞれの栄養投与方法に関する基礎知識を紹介します。

経口摂取について

経口摂取とはその名の通り「口からご飯を食べる事」です。栄養療法にとって最も望ましい状態は「十分な食事を経口摂取する事」ですので、可能な限り経口摂取を目指していきましょう。しかし、患者さんは疾患・環境・薬物の要因によって経口摂取が困難な時があります。そんな阻害因子と、セラピストが介入可能な部分と共に紹介します。

阻害因子1:疾患因子

経口摂取を阻害する疾患因子として次のようなものが挙げられます。

  • 脳卒中による嚥下障害
  • 整形外科術後による疼痛
  • 心不全や腎不全などの内科疾患
  • うつ病や認知症などの身体機能以外の問題

原疾患の対処はドクターによる医学的処置に加え、セラピストによる介入で改善出来る部分もあります。嚥下障害であれば、STを中心とした嚥下機能への直接的なアプローチや、PTOTを中心とした座位保持能力向上によって改善可能かもしれません。また整形疾患であれば、理学療法訓練時間を食前にはマイルドに行うなどの配慮が効果的でしょう。

阻害因子2:環境因子

実はちょっとしたことが経口摂取を阻害していることもあります。

  • 食事がまずい
  • 食器が味気ない
  • 食堂で食べたくない
  • 輸液が多すぎる

食事がまずいときには可能ならば「ふりかけ」を持参したり、食堂の雰囲気が嫌ならば部屋食を勧めたり、食器や食べる場所(窓際にしてみる)の変更などのちょっとしたアイデアで改善出来る部分もあるでしょう。回復期病棟に従事するセラピストであれば、時間を掛けて関わる事が出来るという側面があります。食事の話題をする習慣をつけて、食べれない理由はないか、少し探ってみましょう。

阻害因子3:薬剤因子

食欲を減退させる可能性のある薬剤があります。

  • 抗うつ薬
  • ビタミンD製剤
  • 鉄剤
  • 解熱鎮痛薬

上記は一部ですが、比較的よく用いられる薬剤です。食欲が改善されないのは薬のせいではないか?と少し疑ってみるクセを付けてみると良いでしょう。

このように経口摂取出来ない状況に対し「しょうがないなぁ…」とセラピストは思ってしまいがちですが、意外にも対応出来る部分があるかもしれません。しかし疾患そのものの改善は時間がかかるものも多いですし、ちょっとした工夫ではどうにもならない事もあります。そのような場合には経腸栄養or静脈栄養が必要になります。

経腸栄養について

消化管は十分に機能している場合には、経腸栄養が選択されます。経腸栄養には経鼻チューブと胃瘻があります。経鼻チューブor胃瘻の選択は、経腸栄養の必要な期間によって選択されます。静脈栄養とは異なり、経腸栄養は胃・腸を使って栄養投与を行うために、下記のようなメリットがあります。

  • 腸管粘膜の維持
  • 免疫能の維持
  • 代謝反応亢進の抑制
  • 胆汁うっ滞の回避
  • 消化管の生理機能維持

経鼻チューブ

6週未満の経腸栄養が必要な際に選択されます。鼻腔から胃(または十二指腸)まで挿入したチューブより栄養投与を行うことです。脳卒中患者さんや肺炎患者さんで、鼻にチューブを入れて食事時間に注入されているのを見たことがあるでしょう。たまに気持ち悪くて自己抜去してしまい、看護師さんが慌てているのを見ますね、あれです。

特徴1.不快感がすごい

鼻にチューブが入っているというのはすさまじい不快感…を通り越して、痛みが生じます。チューブでなくて、鼻から水が逆流するだけでも痛くて涙しちゃうし、鼻に綿棒をぐいぐいと突っ込むとなるとそれ以上の痛みと涙が出てくるでしょう。この不快感のために自己抜去してしまう患者さんが多いのでしょう。一時的ではなく長期間、そんな不快感を感じさせてしまうのは大きなデメリットです。

特徴2.嚥下機能に悪影響

健常者に対し、経鼻チューブを付けて嚥下させた研究があります。経鼻チューブを付けた群と付けなかった群に、同量のゼリーを摂取させると、チューブを付けた群の方が嚥下回数が多かったのです。つまりチューブを付けていると嚥下しにくいのです!健常者であっても嚥下しにくいのに、嚥下障害のある方がチューブをつけたままに嚥下することは至難の業(業?)と言えるでしょう。嚥下とはもちろん食事だけではなく、唾液などの分泌物に対しても行うので、チューブを付けている事により誤嚥を誘発する可能性があると知っておきましょう。

特徴3.刺激による炎症

チューブは体の中という繊細な部分を通るために、固定が不十分であれば、余計な圧迫刺激を加えます。圧迫により潰瘍を生じ、炎症を引き起こされる事によって声帯麻痺・喉頭閉塞・呼吸困難を生じる可能性があります。

特徴4.チューブの閉塞

チューブから栄養素を含んだものを流動させるため、ほおっておくと蛋白質が固まってしまい、閉塞してしまいます。そのため注入を行った後は、白湯を注入してきれいにし、食用酢を充填させておく。といった対応をする必要があります。

特徴5.すぐに栄養投与出来る

胃瘻と違い、手術などが必要ないためにすぐに栄養投与を開始することが出来ます。

特徴6.不要になった時にすぐに取り外せる

鼻へ通すだけの処置であるため、すぐに取り外すことが出来ます。また術侵襲もないために創部などの跡も残らずに、その後の生活を送ることが出来ます。

胃瘻

6週以上の経腸栄養が必要な際に選択されます。腹壁-胃の間に形成された瘻孔にチューブを通し、そこから直接的に胃へ栄養投与を行うものです。胃瘻のことを「PEG(ペグ)」と呼ぶ人もいまうすが、「PEG=経皮内視鏡的胃瘻術」であり、内視鏡を用いて胃瘻造設を行うことを指します。厳密には「胃瘻≠PEG」なのですが、現在ではほとんどの胃瘻がPEGによるものなので、PEGと呼んでも問題はありません。

特徴1.不快感が少ない

チューブ自体の不快感はかなりのものですが、胃瘻では不快感が少ないです。そのため、自己抜去というリスクがほとんどありません。また、注入時以外はチューブが付いているわけではありませんので、見た目には分かりません。

特徴2.誤嚥を起こしにくい

胃瘻では直接的に胃へ送るため、栄養投与によって誤嚥することはまずありません。また、チューブはその存在自体が誤嚥を引き起こすリスクになるために、唾液の誤嚥リスクを高めてしまいますが、胃瘻ではその心配も軽減します。

特徴3.術侵襲がある

胃瘻は生涯使うわけではなく、不要になれば閉鎖することも可能です。…現実的には6週以上に嚥下障害が見込まれる方が対象であるために、閉鎖する事は少ないですが…。しかし、閉鎖してもそこには傷跡が残ってしまいます。

特徴4.安易に選択されてしまう

上述したように、胃瘻は誤嚥するリスクほとんど無いために、安全に栄養投与することが可能です。そのため「安全に…」という思いから安易に選択されてしまう事も少なくありません。

静脈栄養について

栄養投与の原則は“If the gut works, use it”(腸が使える場合は腸を使え!)であるため、可能な限りは経腸栄養を実施します。しかし消化管が使用不可能であれば静脈栄養を選択しなければなりません。静脈栄養には、末梢静脈カテーテルにより栄養投与する末梢静脈栄養法(PPN)と、中心静脈カテーテルにより栄養投与する中心静脈栄養法(TPN)があり、その選択は実施期間・患者の栄養状態・投与するエネルギー量などにより決められます。

末梢静脈栄養法(peripheral parenteral nutrition:PPN)

四肢の末梢静脈にカテーテルを挿入し、そこから栄養投与を行う方法です。2週間以内の栄養投与の場合に選択されます。点滴といわれてパッと思い浮かぶものがこれにあたります。

1000kcal程度の栄養投与が行えますが、基本的には輸液が中心的な役割となります。これは細い血管に対して浸透圧の高い(=高エネルギー)輸液を行うことで静脈炎とそれに伴う血管痛が生じてしまうためです。

中心静脈栄養法(total parenteral nutrition:TPN)

上大静脈・下大静脈といった中心静脈にカテーテルを留置し、血液に直接栄養素を補給する方法です。2週間以上の栄養投与の場合に選択されます。

末梢血管とは違い、太い静脈にカテーテルを留置することで末梢静脈栄養で問題となる血管炎になりにくいため、高カロリーの投与が行えます。

医学的処置としては静脈切開時・穿刺時などに神経損傷や気胸などのリスクがありますが、リハ職として知っておきたいは管理時の合併症です。カテーテルは体-外部がダイレクトにカテーテルで繋がっているために、感染症のリスクが非常に高いです。そのためリハ介入によって体動することで、挿入部の皮膚に出血や腫脹などの異変がないかをチェックするクセをつけておく事が良いでしょう。

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