リハ栄養の基本:必要エネルギーの計算方法について

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栄養と言えばカロリー調整です。痩せている患者さんには+200~300kcalのカロリーで体重増量していく必要がありますし、肥満の患者さんでは-200~300kcalのカロリー摂取で減量する必要があります。このように患者さんごとに必要エネルギー量に応じて調整することが必要です。が、そのためには、そもそも患者さんの必要エネルギーを把握しなければなりません。この記事では必要エネルギーの計算方法を紹介します。

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1.Harris-Benedictの式

ハリス・ベネディクトの式と呼びます。栄養関連の本や記事や学会発表では非常によく利用されている計算式です。計算式は下記のようになります。

基礎代謝量:BEE

  • 女性 665.1+(9.56×体重kg)+(1.85×身長cm)-(4.68×年齢)
  • 男性 66.47+(13.75×体重kg)+(5.0×身長cm)-(6.75×年齢)

エネルギー必要量:TEE

  • BEE×活動係数(AI)×ストレス係数(SI)

この式は1918年には報告されたものです、古い!そんな式がずっと使われているので、すごーいエビデンスの高いものだ…というわけではないようです。この報告がされて以降、200~300のエネルギー必要量を計算する式が提唱されているようです。しかしながらそれらは臨床で普及しなかったようなのです。それだけたくさんの計算式が出ているということはやはり穴があるのでしょう。

どうやら、この式は米国成人239名・新生児94名を対象に得られたデータより、体重や熱量の相関などから統計学的に算出されたものらしく、その妥当性には疑わしい部分があるそうです。また日本人とは体形そのものが違うため、この式をそのまま代用してしまうことには問題があるようです。ちなみに18歳以上がこの式の適応になります。

1-2.活動係数とストレス係数

活動係数とは「寝たきり~通常生活」までの活動度合を数値で表現したものです。数値が高くなればより活動的です。ストレス係数とは疾患によるストレスの度合いを活動度合を数値で表現したものです。こちらも数値が高いほど体にストレスがかかっているため、数値は高くなります。一覧を下記表に示します。

活動係数
寝たきり:意識低下 1.0
寝たきり:覚醒状態 1.1
ベッド上安静 1.2
ベッド外活動 1.3~1.4
一般職業従者 1.5~1.7

 

ストレス係数
飢餓 0.6~0.9
術後:合併症なし 1.0
小手術 1.2
中等度手術 1.2~1.4
大手術 1.3~1.5
長管骨骨折 1.1~1.3
多発骨折 1.4
腹膜炎・敗血症 1.2~1.4
重症感染症 1.5~1.6
熱傷 1.2~2.0
60%熱傷 2.0
発熱:1℃ごと +0.1

こちらの係数も確定したものはないようで、文献によってまちまちです。必要エネルギーを計算することは簡単そうに思えますが、実は難しいですね。これらの式を当てはめた実例は次のようになります、少し計算がややこしいです。

女性、80歳、160cm、65kg、ベッド外活動、小手術後の場合

  • 女性 665.1+(9.56×体重kg)+(1.85×身長cm)-(4.68×年齢)
  • →  665.1+(9.56×体重kg=65)+(1.85×身長cm=160)-(4.68×年齢=80)
  • →  665.1+621.4+296-374.4
  • →  1208.1
  • →  TEE=BEE×活動係数×ストレス係数
  •    1208.1×1.3×1.3=2041.7

2.間接熱量測定法

間接熱量計という機器を用いて、吸気と呼気の酸素・二酸化炭素の量を測定し、消費エネルギーを測定。

安静時エネルギー消費量

  • 1.44×(3.9×酸素消費量+1.1×二酸化炭素産生量)

エネルギー必要量

  • REE×活動係数
  • (ハリス・ベネディクトの係数を利用)

呼吸から計測することが出来るために高い確実性でエネルギーを算出することが出来ます。

  1. 8時間以上の絶食後の検査
  2. 人工呼吸器など強制的な酸素供給下での計測困難
  3. そもそも間接熱量計がない

これらの問題により、現実的には実用できないという問題があります。

3.体重から計算する簡易法

  • TEE=25~35×体重

めっちゃ簡単ですよね。体重にかければいいのですから、60kgの人であれば…

  • 25×60=1500kcal
  • 30×60=1800kcal
  • 35×60=2100kcal

と計算はすぐに行えます。そんなに幅が広くていいの?!と思うかもしれませんが、これはストレス係数と活動係数を考慮してどの程度を用いるか考慮してみてください。寝たきりで侵襲も少ないような人であれば25の計算で構わないでしょうし、術後リハビリをガンガンやっている人であれば35の計算を用いる事が良いでしょう。

おわりに

ここまでの計算方法を見ていかがだったでしょうか?「すっごい曖昧!」と思うかもしれませんが、まさにその通り、曖昧なのです!なので、曖昧さを含んだ上で計算式を利用しなければなりません。

例えば活動が少なくて「25×60=1500kcal」の消費エネルギーと計算し、1800kcalの食事を提供されていたとします。しかしいくら待っても体重が増えない(他の要因は無いのに!)!となれば、消費カロリーの計算式がおかしい可能性が高いでしょう。「30×60=1800kcal」を消費エネルギーと考え、食事を再考する必要があります。

曖昧さを理解していれば、このように柔軟に対応可能です。式を利用しながらも式を頼らない気持ちを持ちながら、計算を行っていく必要があるでしょう。

参考書籍:ストレス係数や活動係数の表はこの書籍を参考にしております。またハリスの式の妥当性についてもこの書籍を参考にしております。

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