褥瘡患者さんの栄養管理とリハビリに関する基礎知識

congerdesign / Pixabay

褥瘡患者さんに対する関わりとして、適切な栄養管理とリハビリは必須です

傷を治そうと思ったらガリガリで低栄養状態…という人よりも、ご飯が食べれて筋肉質な人の方が治りそうですよね?そんなイメージです。

褥瘡と栄養が密接な関わりを持つことは多くのリハビリ学生ですら知っていることです。

そしてどれだけ栄養状態が良くなっても、リハビリの観点から褥瘡が生じない生活を作り出さなければ、いつまでも褥瘡に怯える日々になってしまいます。

しかし、実際にどのように栄養状態を評価し、どのように介入していけば良いのか…経験のない療法士にとってはなかなかに難しいもの。そこで、褥瘡患者さんに対する栄養管理とリハビリの基礎知識をまとめました

スポンサードリンク

褥瘡とは

skeeze / Pixabay

まず、褥瘡について復習をしておきましょう。

褥瘡とは一般的には「床ずれ」と呼ばれたりもします。一般の方では「床ずれ」と呼んだ方が理解してくれる場合が多いです。患者さんや家族さんに説明するときには、どちらを使うか考えながら使ってみましょう。

褥瘡をすごく平たく説明すると「ずっと圧力がかかって組織に障害が起きてしまったもの」です。

そういえば、以前担当した患者さんで「絶対に動かないでくださいね!」とナースに伝えられた結果、鋼の意志で動かずにいた患者さんの後頭部に軽度の褥瘡が出来ていました。元気な患者さんだったので、気合いでそこまで出来るのだ…とびっくりしたことがあります。こんな時にも褥瘡は出来るので、注意してください。

褥瘡の定義

その定義は次のようにされています。

  • 『身体に加わった外力が骨と皮膚表層の間の軟部組織の血流低下、あるいは停止させ、この状況が一定時間持続されることによって生じた不可逆的な阻血性障害』

つまり「長い時間圧迫してるとあかんよ!」ってことです。

私たちが寝ている時や座っている時、長時間どこかが圧迫されても褥瘡に至ることはありません。自分でも気付かないうちに、寝返りをうったり、もぞもぞと耐圧分散をしているためです。

これが意識状態が悪い人や、拘縮のある人、何らかの運動障害のある人…間違ったギプスの巻かれ方をしている人など、自分で耐圧分散出来ない時に褥瘡に至ってしまいます。

褥瘡の症状

褥瘡というと潰瘍に至った状態(穴があいたような状態)をイメージするものですが、実は潰瘍だけが褥瘡なのではありません。褥瘡は時間経過によって下記のように病変が形成されていきます。

  1. 発赤
  2. 水泡
  3. びらん
  4. 潰瘍

つまり、圧迫が長時間となって赤くなってきているときは褥瘡のはじまりなのです。患者さんの皮膚状態をチェックして赤くなっていたら、クッションを使ってポジショニングしたり、定期的な体位変換をしたりといった対応をする必要があります。

潰瘍に至ってしまってから治療するのは非常に大変なものです。褥瘡は作らないことが絶対に必要ですし、もし形成されてしまっていれば出来るだけ早く治療に取り組むようにしましょう。communication_1499784600褥瘡の経過評価としては、日本褥瘡学会が出している評価表を使用しましょう。ダウンロードはこちらから

褥瘡が生じるまでの時間

褥瘡が生じるまで(発赤に至るまで)は2時間とされています。これは皮膚などの軟部組織の問題によって、人であれば避けられないものです。

もし私たちがカバのような肉体を持っていたら、もっと褥瘡に強かったかもしれませんね…。

たった2時間で褥瘡が始まってしまうのです!

褥瘡の重症度分類

褥瘡はその重症度から分類をすることが出来ます。

こちらも日本褥瘡学会が出している評価表を使用しましょう。ダウンロードはこちらから

communication_14997846001.深さ:褥瘡を観察して一番深いところを評価します。真皮までの損傷を「d」、それ以上を「D」と評価します。

2.滲出液:褥瘡になると、そこから滲出液が出てくるようになります。清潔を保つ必要があるので、ドレッシングを定期交換する必要があります。その回数から評価します。1日1回以下を「e」、それ以上を「E」とします。

3.大きさ:損傷されている広さを判定します。一番長いところ(長径)と、その直交する部分の最大径(短径)を測定し、掛け算したものを数値化します。100未満を「s」、100以上を「S」と評価します。ちなみに発赤も評価対象になっています。

4.炎症・感染:感染兆候がなければ「i」、あれば「I」と評価します。

5.肉芽組織:良性肉芽(鮮紅色の肉芽で肉眼にて確認)が多いほど治癒が進んでいると判断するため、多い方がよいとされています。割合が50%以上を「g」、50%未満を「G」と評価します。

6.壊死組織:壊死組織の有り無しで判断します。なければ「n」、あれば「N」と評価します。

7.ポケット:ポケットとは皮膚の下で空洞のように広がっている状態で、一見皮膚があるので小さく見えるけども実は大きい…というものです。評価においては存在する場合に「-P」と記載します。

褥瘡の好発部位

褥瘡は人の身体ででっぱっている部分に好発します。

背臥位で寝ている状態では下記のような部位に出現しやすいです。

  • 後頭部
  • 肩甲骨
  • 仙骨

側臥位になっていると肩・大転子・外果といった部位に出現しやすいです。

患者さんの意識レベルが低いなどによって褥瘡が出来る可能性がある場合には、定期的に好発部位を視診する癖をつけましょう。

褥瘡は思っている以上にあっという間に形成されてしまいます。2時間です。

ナース任せにしないで、全ての医療職がチェックする方が良いでしょう、いくらナースがプロであっても忙しくて2時間くらい褥瘡リスクの高い患者さんに行けない…なんてことはゼロではありませんもの。みんなで関われば、それだけリスクを減らせます。

褥瘡についてはたくさんの書籍が出ています。知識が少しあるだけで、目の前の患者さんに関われることが大きく増えてきます。必ず「いつでも振り返れる」ようにしておきましょう。

褥瘡予防と栄養管理

allenchann / Pixabay

褥瘡にという症状の予防や治療では、寝たきりを防ぐ・体位交換を行う・外科的処置を行うといった介入が非常に重要とされています。そして、栄養管理はその基本的なものとして欠かすことの出来ない存在です。

ここからは褥瘡と栄養の関連を見ていきましょう。

低栄養状態が褥瘡を助長する理由

褥瘡の発症リスクとなる要因の一つが、低栄養状態です。

静脈経腸栄養ガイドラインにおいても「低栄養は褥瘡の危険因子であるため、適切な栄養管理は褥瘡の予防に有効である(AⅡ)」とされており、その重要性が示されています。AⅡというのは推奨レベルのことで「すっごい大切だから、ぜったいやってね!」くらいのレベルと思っておいてください。

国内外の研究においても褥瘡と低栄養の関連を調べたものは多く、その関連性の高さは示されています。

確かに、臨床においても明らかに低栄養状態の人は褥瘡に至りやすいものですし、逆に栄養状態良好な人は頑張ってくれているような印象をもちます。

栄養状態の評価としては、下記の記事を参考にしてください。

リハ栄養で必須!栄養評価のまとめ

2017.02.24

リハ栄養アセスメント、9つの身体計測について

2016.12.19

そして、栄養管理において最も着目しておきたい項目はたんぱく質…特にアルブミンです!

身体におけるたんぱく質合成が弱っていると「圧迫に対する組織の耐久力が低下=褥瘡になりやすい状況」に至ってしまうからです。

たんぱく質のなかでもアルブミンが重要とされる理由は、アルブミンそのものが大きいために水分保持の作用を持っているためです。アルブミンが少なくなることで血管内の水分が少なくなって、リンパ球が減少し免疫機能が低下…その結果、新しい組織を作る力もなくなり、貯えられていたたんぱく質も消費してしまい…非常に弱い状態になってしまうのです。

理想とされるアルブミン値は日本褥瘡学会が提唱しています。

  • 栄養状態低下は血清アルブミン値3.5mg/dL以下が目安

もちろん、アルブミンはCRPなどの影響を受けて変動するために、アルブミン値だけに着目していてはいけません。しかし、ひとまずの目安としてアルブミンをまず見ることが必要でしょう。

栄養管理に必要な栄養素の摂取

となると、栄養状態をある程度維持するための食事などが大切です。そこで、たんぱく質を摂取に着目していきましょう。

静脈経腸栄養ガイドラインでは、次のように記載されています。「具体的な目標値を設定せず、あくまで個人の病態に応じて必要なエネルギー量とたんぱく質量を摂取する」と。これは…困った笑。

そこで、一般的に言われている低栄養を防ぐための栄養素を参考にしましょう。

  • エネルギー摂取目安:体重 1kgあたり 25~30kcal/日
  • たんぱく質摂取目安:体重1kgあたり 1.5~2.0g/日
  • 亜鉛摂取目安:15mg /日

ちなみに亜鉛がないと十分なたんぱく質の合成が出来ないために、褥瘡における栄養管理では重要とされています。ピンとこないかもしれませんが、かなり注目されているので、知っておきましょう。(それだけでも褥瘡への栄養管理に詳しいと思ってもらえる…かも!)

またサプリメントも良いとされています。

これらの商品はコンビニでも簡単に手に入りますし、必要な栄養素が含まれています。褥瘡予防のガイドラインにおいてもサプリメントの有効性は示されていますので、リスクのない範囲で使用しましょう。

「特化した栄養補助食品が作られていないかな~」と調べてみたのですが、今はまだ発売されていないようです。そのうち「褥瘡予防をサポート!〇〇ジュース!」みたいなのが発売されるかもしれませんね。

褥瘡治療と栄養管理

kerdkanno / Pixabay

ここまでで栄養管理の重要性はお伝えしました。治療となると、さらに栄養の重要性が増してきます。

まず、必要とされる栄養素は静脈経腸栄養ガイドラインでは下記のようにされています。

  • エネルギー摂取目安:体重 1kgあたり 30~35kcal/日
  • たんぱく質摂取目安:体重1kgあたり 1.2~1.5g/日

もちろんこれはあくまでもガイドラインとして掲載されているもので、実際の患者さんに合わせて(合併症や疾患有無)調整される必要があります。

エネルギー摂取目安に関しては、日本褥瘡学会では下記のように紹介されています。

  • エネルギー摂取目安:基礎エネルギー消費量の1.5倍以上
  • たんぱく質摂取目安:必要量に見合ったたんぱく質

基礎エネルギーの計算方法についてはこちらの記事を参考にしてください。

リハ栄養の基本:必要エネルギーの計算方法について

2017.01.16

予防も治療も、大きく意味合いは一緒です。どちらもエネルギー量・たんぱく質量・亜鉛量に気を付けながら、褥瘡管理をすすめていってください。

褥瘡とリハビリ

andreas160578 / Pixabay

ここからは実際にリハビリ職が関われる褥瘡への介入について考えていきます。

どれも大切なことばかりですので、押さえておきましょう。

褥瘡カンファレンス

褥瘡が生じやすい患者さん、すでに褥瘡が生じている患者さんをピックアップして、その患者さんの状況をドクター・ナース・栄養士さんといった多職種で情報共有します。

褥瘡カンファレンスを行うことで下記のメリットがあると考えています。

  • 褥瘡に対する意識が高まる
  • 褥瘡に関する情報が集まる
  • 褥瘡に関する情報発信を行う

後述しますが、療法士はポジショニング指導などを行う必要があります。しかし、実際に2時間ごとの体位交換をするの療法士ではなく、ナースさんや助手さん、または家族さんといった、療法士以外の人になります。

適切な指導を行い、日々の現場で実践出来るように情報発信をしましょう。

ポジショニング

カンファレンスにて褥瘡の部位やリスクについての情報が集まれば、それを出来るだけ回避するようなポジショニングを設定しましょう。

ポイントは3点あります、それぞれに見ていきましょう。

  1. 簡単なものにする
  2. いくつかの体位を設定する
  3. 道具を使う

1.簡単なものにする

きちんと関節可動域訓練をして、ようやく整った体だから設定することが出来るポジショニング…ではいけません。誰でもいつでも簡単に出来るようなポジショニングを設定することで、実用的なものになります。

口頭での伝達では難しいことが多いものですから、出来ればいくつかの方向から撮った写真を掲示するなどして、いつでも確認出来るようにしておきましょう。

2.いくつかの体位を設定する

褥瘡は2時間ごとの体位変換が必要となりますので、1つしかポジショニングの方法を知らない…なんて事態は大変困ります。ポジショニングされた姿勢で褥瘡が生じる…可能性もあります。

そこで最低でも3つの体位のポジショニング例を作っておきましょう

  • 右側臥位
  • 背臥位
  • 左側臥位

片麻痺のある患者さんなどでは麻痺側を下にした側臥位をとることが難しい場合もあります。斜めを向いたような側臥位をとることも必要です。絶妙なポジショニングが必要となりますが、それを評価して提案できるのは療法士の特権です。頑張って探しましょう。

3.道具を使う

ポジショニングを効果的に行うには、クッションなどの道具を用いることが良いでしょう。最近では安くでビーズクッションが売られていて、ポジショニングに非常に使いやすいです。感染などの問題が無ければ、積極的に利用していきましょう。

ビーズクッションの補充用ビーズはいくつか持っておく方が、オーダーメイドでぴったりサイズを作れるために良いでしょう。もし、いい感じの袋があるなら、補充用だけたくさん買っておくのもひとつですね。

その他にも、下記のような道具はいくつか持っておく方が良いでしょう。

また、ベッドそのものも最近は良いものがたくさん出ています。耐圧分散に優れているもの、自動で動いて体位変換してくれるものなど。

在宅の方であればレンタル出来るものも多いですし、病院などの施設においても導入しているところが多いはずです。

余談ですが、犬用の商品もあるようです。褥瘡になるのかなぁ…。

離床させる

おそらく療法士に一番求められている部分が離床です。

そうですよね、そもそも離床してうろうろしていれば、褥瘡になること自体がないのですから。

心身機能を評価して、離床出来るようにする…もうこれ以上の言葉がありません笑。

療法士であってもケアをする

ケアと言うと少し難しいかもしれませんが、ちょっとした心遣いだと思ってください。

  • シーツにしわが出来ないようにピンと伸ばしてからベッドへと寝る
  • 服のたるみがないようにきちんと伸ばしてから座位をとる
  • オムツ内に失禁がないかチェックする

シーツや衣服のしわは身体にとって非常にストレスが高いため、褥瘡の発生因子となります。ピンと伸ばすだけで褥瘡予防になりますので、絶対に行ってください。

また水分は皮膚にダメージを与えますので、こちらも気にしてください。特に褥瘡リスクの高いような意識状態の悪い患者さんでは、失禁による臀部や陰部のトラブルが少なくなく、褥瘡へと繋がることがあります。いつ失禁しているかは分からないので、ナースさんや助手さん任せにせず、チェックしましょう。

「いや~自分ひとりくらいがさぼっててもいいかな~」なんて気持ちで、適当なシーツや衣服の管理を行ったり、失禁したままに長時間のリハビリを行ったり…もうね、絶対ダメですよ!

おわりに

maxlkt / Pixabay

基本的に、医療職が関わっているのに褥瘡が出来るのは恥とされています。

ちゃんと管理出来ていなかったんだよね?患者さんのこと診てなかったんだよね?という観点からです。

リハビリ職であっても日々のケアとして、療法士だから出来る技術を通して…患者さんの褥瘡に対策していかなければなりません。そして、これまでなかなか語られなかった栄養についても少しずつ着目していかなければなりません。

  • この人は栄養状態が悪いから、褥瘡リスクも高い、離床もなかなか進まない…

こう感じながら、患者さんと関わっていくと、少し見え方が変わってきます。今回は栄養に馴染みのない療法士でもすぐに分かる栄養管理について紹介しました。

褥瘡患者さんには栄養管理を頭に入れながら、リハビリ職として出来る介入を行っていきましょう!

スポンサードリンク

         
congerdesign / Pixabay