リハビリ患者さんの不安・恐怖心を理学療法士は取り除くべきか

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リハビリ場面で、いつも不安を訴える患者さんを担当したことはありませんか。

  • そんなことで不安にならなくてもいいのに…
  • いつも同じことを不安に感じて…
  • 不安が口癖になってるのかなぁ…

不安を訴えられると「どうにかしなきゃ…」と思ってしまいがちです。しかし、実は患者さんの不安を「放っておくべき」場合もあるのです

この記事では、患者さんの不安について考えていきましょう。

患者さんが不安を訴えるのは、当たり前だ!

Sponchia / Pixabay

患者さんは色々なことで不安を訴えます。

  • 痛みが取れなかったらどうしよう…
  • 歩けるようにならなかったらどうしよう…
  • 足が曲がらなかったらどうしよう…
  • 悪くなってるって言われたらどうしよう…

療法士からすれば「そんなことで不安にならなくてもいいのに」と思う事でも、患者さんは不安に思ってしまうものです。でもね、まず考えておきたいのは、患者さんは不安になって当たり前だということです。

  • 初めての怪我や病気を受け止められない
  • 怪我や病気の今後が予測出来ない・実感出来ない
  • 以前と違う身体で生きていかなければならない
  • 以前のような生活や仕事や趣味が出来ない

療法士にとっては当たり前の事態がたくさん患者さんにはふりかかってきます。そんな背景があるから、色んな物事に不安になって当たり前なのです。不安にならないわけがない!と私は思います。

一方、あれ?全然不安がないぞ!と感じる患者さんもいます。

  • 二回目の手術だよ!
  • 友達も同じ怪我をしていたから!
  • 旦那の看病でリハビリをみたことがあります!

しかし、そう感じる状態でも多くの患者さんは多かれ少なかれ不安を抱いています。療法士が患者さんと関わる際には「不安はあるはず、あって当たり前だよね」と思っておきたいものです。

患者さんの不安がリハビリの阻害因子となる?

IraEm / Pixabay

不安はそれだけでも取り除きたいものですが、リハビリにも悪い影響を与えることがあります。

  • 集中してリハビリに取り組めなくなる
  • 積極的にリハビリに取り組めなくなる
  • 身体に力が入って、関節可動域訓練がしづらくなる
  • 療法士の指示が入らなくて、動作練習が進まなくなる
  • 日常生活に制限をかけてしまって、活動範囲が狭くなる
  • 治るはずのものが治らなくなる

ちょっと思い浮かべるだけでもたくさんの影響が考えられます。たかが不安…されど不安…。

さて、論文を調べてみましょう。

「リハビリ-理学療法-不安」に関する論文(文献)

Pexels / Pixabay

急性心筋梗塞患者の身体活動に関連する因子について―入院期諸因子と回復期身体活動との関連性―

岡 和博, 丸岡 弘, 大熊 克信, 五味川 右, 中村 智弘, 石田 岳史

理学療法 – 臨床・研究・教育 Vol. 24 (2017) No. 1 p. 23-30

要旨

【目的】急性心筋梗塞(acute myocardial infarction:AMI)患者の入院中の諸因子と,回復期身体活動(physical activity:PA)との関連性を検討することである。

【方法】対象は,AMI患者25例(平均年齢65.6±9.5歳,男性17例)。入院期諸因子として,不安状態,抑うつ状態,ソーシャル・サポートの状態,セルフ・エフィカシー(self-efficacy:SE)の状態,入院前のPA量の状態,最高酸素摂取量,嫌気性代謝閾値の酸素摂取量,握力,膝伸展筋力,冠危険因子数をそれぞれ入院中に測定した。回復期PAは,退院後の日常生活のPAと心臓リハビリテーション(cardiac rehabilitation:CR)実施時の消費カロリーを測定した。統計解析は,回復期PAを従属変数とした重回帰分析を実施した。

【結果】回復期PAの関連因子として上肢活動に対するSEが抽出された。

【結論】AMI患者の回復期PAは,入院期の上肢活動に対するSEと関連があり,入院期CRプログラムではそれらの要素に着目することが重要であると示唆された。

j-stageより

急性心筋梗塞の患者さんにおいては、不安や抑うつの状態は回復期における身体活動とはあまり関係のないようです。あれれ笑。

精神疾患患者1症例に対する運動療法の介入効果―介入前後で気分・感情状態は変化する

川野 裕亮, 市村 大輔, 高木 洋平

Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集) セッションID: P-YB-11-5

要旨

【はじめに,目的】本邦では現在,300万人以上もの精神疾患患者が存在する。これだけの母数がいれば骨折や脳卒中などを新たに呈し,身体的なリハビリテーション(以下リハ)を必要とする患者も多く存在するのは必然である。特に精神疾患の患者では飛び降りや飛び込みなどによる多発外傷を呈し,回復期リハ病棟等での入院が長期間に及ぶケースも少なくない。しかしながら回復期リハでは精神的な面に関してほとんど目が向けられていないのが現状である。Ohmatsuら(2014)はペダリング動作による有酸素運動を行うと情動状態の改善がみられたと報告している。我々はこのような報告をもとに,精神疾患を有する1症例に対し運動療法を実施し,情動面の改善を期待した。

【方法】症例は40歳代の女性である。視神経炎の治療のためステロイドパルス療法を行い,ステロイド精神病を発症する。その後,飛び降りから多発外傷を受傷し,急性期病院を経て受傷後34日目に回復期リハ病院に入院する。入院当初はハミルトンうつ尺度が23/52点と最重度のうつを患っていた。身体面の改善を目的にリハを実施しても「この先どうなるのだろうか」といった不安を訴える発言が非常に多かった。そのため,受傷後88日目から10日間,精神面の改善を狙った有酸素運動を実施した。効果判定をするため,有酸素運動の前後,ベッド上での筋力訓練の前後で大杉ら(2014)が報告した気分・感情状態の評価指標(POMS)を測定し,比較した。介入時間は15分にし,負荷量は症例の快適負荷とし,各運動前後での血圧,脈拍の測定をした。有酸素運動の機器は自転車エルゴメーター(OG Welness社製)を使用した。測定はベッド上,自転車エルゴメーターでそれぞれ10回,計20回行った。統計処理はwilcoxonの符号付き順位和検定を行い,有意水準は5%未満とした。

【結果】自転車エルゴメーターを用いた有酸素運動前後ではPOMSの活気の項目が優位(p<0.01)に改善がみられた。ベッド上の筋力訓練の前後では優位差のある変化はみられなかった。他の項目に関しては有意差のある変化はみられなかった。

【結論】この結果はうつ患者に対して運動療法は効果があるといった過去の報告(Viola, 2014)を支持するものとなった。本症例は身体的なリハビリ目的で理学療法を受けていたが,受傷起点は精神的なものが大きく関わっている。すなわち,リハビリとしては身体面,精神面,両方の介入が必要であり,どちらも同等に考えなければいけない。昨今の社会的な背景を踏まえると,このような患者に対し,適切なリハビリを提供していくことは極めて重要である。今後,至適負荷量を検討していきながら症例数を増やしていき,どのようなプロセスで改善がみられるのかを確かめていきたい。

j-stageより

52回の全国でこんなにおもしろそうな発表が…くそぉ笑。にしても、軽度のものを含めると意外と担当する機会が多いものです、精神疾患患者さん。

うつ症状が運動によって軽快することは、日常的に運動でストレス発散出来ることと近いように思えます。実際のうつ患者さんにおいても、一定の効果が認められるというのは、身体を扱う理学療法士にとっても介入の余地があって非常に良いですね。抄録では不安を訴える発言の変化は触れられていませんが、気になるところですね。

単回のフレイル予防公開講座は地域在住高齢者にどのような効果をもたらすのか?

西郡 亨, 原 泰裕, 岩佐 健示, 半沢 嘉基, 中野 拓, 久住 治彦, 平林 弦大

Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)  セッションID: P-YB-09-3

要旨

【はじめに,目的】近年,介護予防においてフレイル予防が重要視されている。フレイルを予防するには,高齢者自身がフレイルに伴うリスクを認知し行動することが重要であり,そのための啓蒙や運動指導として介護予防教室や公開講座が開催されている。予防活動の効果検証に関して,介護予防教室など継続した複数回での活動の報告は多々見受けられるが,公開講座など単回の講座における効果検証の報告はされていない。そこで今回,単回のフレイル予防公開講座(公開講座)が地域在住高齢者にもたらす効果を検証することとした。

【方法】A病院にて開催された公開講座で得られたアンケート結果から,その効果を検証した。対象は,公開講座に参加しアンケート調査に協力が得られた地域在住高齢者37名のうち,記入漏れ等で質問紙に不備のない21名(平均年齢74±6.4歳,男性4名・女性17名)とした。アンケートは独自に作成したアンケート調査票を用いた。この公開講座では,フレイル判定の後にフレイルに関する講義を行った。公開講座の効果判定は,行動変容に着目し,①講座前後の運動意欲の変化 ②講座後の要介護化に対する不安感の変化 ③行動プラン立案の3つを検証した。「運動意欲」と「要介護化に対する不安感の変化」についてはいずれも4段階評価,「行動プラン」に関しては「介護を受けないために何をしようと思いましたか」との問いに対する自由記述で回答を求めた。統計処理は,講座前後の運動意欲のアンケート結果をWilcoxonの符号付順位和検定にて比較し,p<0.05で有意差ありとした。要介護化への不安感の変化の結果は,単純集計し割合を求めた。行動プランに関する自由記述の回答は,テキストマイニングの手法にて頻出後抽出と階層的クラスター分析を行った。

【結果】講座前後の運動意欲の変化に有意差が認められた(p=0.005)。講座後の要介護化への不安感の変化は,不安感減少者が87%,不安感増加者が13%であった。行動プランに関する自由記述では,最頻150語を抽出した結果「運動」「思う」「栄養」「食事」「続ける」が上位5番目までの最頻出語であった。階層クラスター分析では「続けること」「運動,食事,栄養」の2クラスターが得られた。

【結論】単回の公開講座により,地域在住高齢者の運動意欲向上が得られた。また,階層クラスター分析より「継続性」「運動・栄養」が抽出され,要介護状態を予防する行動プラン立案が可能であった。今回の結果を示した要因としては,要介護化に対する不安感が減少していたことから,運動の実施や継続と適切な食事,栄養管理により要介護化へのリスクが減少するという効果を認識できたことが行動変容に影響を及ぼしたと考えられた。本研究の限界として,行動変容が生じた者が実際に行動に移したか否かは不明である。今後は,公開講座にて行動変容が生じた地域在住高齢者の運動と栄養管理の継続の可否を検証していく必要がある。

 j-stageより

要介護になることへの不安感というのは、考えたこともなかったですね。確かに、患者さんと話していると「(重度の患者さんを見て)あんな風なるんやったら、死んだ方がマシやな」とか「介護されるのは嫌や」というようなことを言う人がちらほらといます。改めて考えると、そうなんですよね。

そんな不安感が市民公開講座を通して減少するというのは、非常に健全なこころになれるので良いですね。ついつい身体の側面ばかり見てしまいがちですが、この抄録のようなこころの側面にも着目したいですね。

再転倒における転倒自己効力感の意義に関する検討

安延 由紀子 , 杉本 研 , 井坂 昌明 , 田中 稔 , 藤本 拓 , 赤坂 憲 , 竹屋 泰 , 山本 浩一 , 樂木 宏実

理学療法学Supplement 2016(0), 1615, 2017

要旨

【はじめに,目的】高齢者における転倒は様々な因子との関連が報告されており,それらを元に考案されたリスク評価法がすでに実用化されている。中でも転倒自己効力感(Modified Fall Efficacy Scale,以下MFES)は主観的な転倒への不安感を評価する方法として近年注目されているが,転倒既往のある高齢者におけるMFESと各転倒関連因子との関連や,再転倒への影響についての検討は不十分である。我々は転倒既往とMFESの再転倒への影響と,それらと身体・精神機能の関連について検討した。

【対象と方法】当科に入院または通院中の自立歩行可能な65歳以上で,1年後までフォローし得た連続100例(平均年齢76.6歳)を対象とした。測定項目は,身体計測に加え身体機能として筋力(下肢筋力,握力),バランス機能(片脚立ち時間,重心動揺検査),10m最大歩行速度を測定した。高齢者総合機能評価(CGA)として認知機能検査(MMSE),手段的活動動作,うつ状態(GDS-15)などを評価した。また運動習慣の有無,後ろ向きに1年間の転倒有無を聴取した。転倒リスク評価として転倒リスク指標(FRI)と転倒自己効力感(MFES)を評価した。1年後に同様の検査を行い,ベースラインにおける転倒既往の有無とMFES低値(41点以下)の有無により4群(I群:転倒既往無/MFES低値無,II群:転倒既往有/MFES低値無,III群:転倒既往無/MFES低値有,IV群:転倒既往有/MFES低値有)に分け,各群間における1年間の転倒有無,MFES総スコア,身体・精神機能との関連を検討した。

【結果】II群とIV群ではIV群が1年間の再転倒と関連し(p=0.05),I群とII群ではII群が1年間の転倒と関連した(p<0.05)。I群とIII群では新規転倒と関連せず,I群とII群,III群とIV群では転倒既往がある方が転倒と関連した(I<II p<0.05,III<IV p<0.01)。1年後の身体・精神機能との関連については,III群のみ筋力,歩行速度,MMSEと有意に関連が認められ,1年間転倒しなかった場合のMFESはIII群で有意に改善が認められた。一方,IV群では身体機能との関連は認められなかったが,GDS-15と有意な関連が認められた。

【結論】転倒既往がある場合,MFESが低いことが1年間の再転倒と関連した。転倒既往は転倒リスク因子の上位であり,既に転倒リスクが高い人の再転倒には心理的要因が影響することが示唆された。転倒既往のない場合は,MFESは新規転倒と関連を認めなかったことから,転倒自体とは転倒既往がより強く影響することが示唆された。今回,身体・精神機能が低いことと転倒恐怖感は関連を示した。転倒予防のアプローチとして,転倒既往があり自己効力感も低い場合は,心理面への介入が有用であり,転倒既往がない場合は,転倒リスク評価を行うことが,転倒予防の意識向上や自発的な身体機能維持に繋がることが示唆された。また転倒を予防できたことがさらなる自己効力感の向上,身体認知機能の維持向上に繋がると考えられた。

ciniiより

 転倒自己効力感って転倒への不安感を評価するスケールだったのですね知らなかった。転倒自己効力感に関する文献は非常にたくさん発表されていて、臨床でも利用できる便利な尺度なので、是非とも一度こちらの文献を読んでみてくださいね:転倒予防自己効力感尺度の信頼性・妥当性の検討

患者さんの不安は全て取り除くべきなのか?

IMS68 / Pixabay

さて、前置きが非常に長くなってしまいましたが、ここからが本題です。

ここまで読んでいくと、不安には良い要素が一つもないような感じでした。

ここで、ちょっと視点を変えて考えてみます。

  • 不安があるから行動出来ない=危険な行動をしない
  • 不安があるから解消したい=適切な対処行動を行える

こんな風に考えることは出来ないでしょうか?

実は不安によって上手くセーブする機能が、患者さんに働くことがあるのです。考えてみると、下記のような効果があると思うのです(文献的なものは見つけたことがありません…すいません)。

  • リスク管理出来る
  • 転倒しない
  • オーバーワーク起こさない
  • ムチャなトレーニングをしない
  • 生活管理出来る

また、逆に不安を解消したいと思う事で、適切な行動に繋がる場合もあるのです。次のような場合もあるのではないでしょうか?

  • 生活習慣病になるのが不安で運動する
  • 要介護になるのが不安で運動する
  • 筋力が落ちるのが不安で筋トレする
  • 生活出来ないのが不安でリハビリに取り組む

このように考えると、適度な不安は持っておくべきではないかと私は考えています。

「え、これって外発的動機付けだから、ダメなんじゃないの?」と思うかもしれませんが、人間なんでも内発的動機付けで行動できるわけではありません。外発的動機付けであっても、行動出来ればいいじゃない!

*モチベーション理論についてはこちらの記事に少し書いてあります、是非とも読んでみてください

知ってた?「やる気」と「本気」はどうやら違うものらしい!

2017.07.03

療法士は不安を評価しよう

Wokandapix / Pixabay

となると、患者さんの不安に遭遇した時には「全て取り除いた方がよいな!」という発想ではなく、「これは取り除いた方が良いな」「これは置いておいた方が良いな」という発想になるべきだと思います。もしくは「これくらいの不安は残して、これくらいは取り除こう」なんて発想かもしれません。

そのためには患者さんの「不安と関連する物事」を評価出来るようにならなければいけません。

 とはいっても、それはすごく難しい。 実際には取り除く方が良い場合の多い不安ですが、「ちょっとは良いことするんだぜ!不安って、あっても良い時があるんじゃん!」と、思ってもらえればうれしいです。と、意外とかわいいやつです笑。

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