一人前の理学療法士に必要とされる6つのコミュニケーションスキル

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理学療法士はコミュニケーションスキルが大切だ!…このような言葉をどこかで聞いたことはないだろうか?

実際の臨床においては「理学療法士と患者=人と人」の関わりであり、コミュニケーションとは切っても切れない関係にある。また、コミュニケーションスキルの高い理学療法士は臨床が上手かったり、他職種連携が上手かったりと、現場で必要であることは明確である。

しかし、一体どのようなコミュニケーションスキルが求められているのだろうか?

そこでこの記事では、理学療法士に必要なコミュニケーションスキルを質的研究にて調査した論文を紹介する。

論文:自立した理学療法士が獲得すべき能力に関する質的研究

芳野 純,二渡 玉江,大谷 健,臼田 滋

理学療法学 = The Journal of Japanese Physical Therapy Association 37(6), 410-416, 2010-10-20

要旨

【目的】資格取得後の理学療法士が,自立して理学療法業務を行うために必要な能力を明確にする。

【方法】職員指導経験がある理学療法士15名に対して,指導している理学療法士がどのような能力を獲得したときに,理学療法士として自立したと感じるか等の質問をインタビューにより聴取した。インタビュー結果を,質的研究である内容分析を用い分析した。

【結果】分析の結果,50のサブカテゴリーと,「理学療法実施上の必要な知識」,「臨床思考能力」,「医療職としての理学療法士の技術」,「コミュニケーション技術」,「専門職社会人としての態度」,「自己教育力」,「自己管理能力」の7つのカテゴリーが形成された。

【結論】職員指導経験がある理学療法士は幅広い能力の獲得を望んでいることが分かった。7つのカテゴリーは教育目標分類学による3つの領域を満たしており,理学療法士が自立して業務を行うための到達目標について,一つの目安を示すことができた。

ciniiより

この論文は上記引用元のciniiでは全文読むことが出来ないが、Googleなどで検索すれば全文をPDFで入手出来る。コミュニケーションについて考えている理学療法士には是非とも読んでいただきたい。

djyac0 / Pixabay

さて、要旨だけでは伝わらない部分もあるので補足する。

この論文は、自立した理学療法士にとって必要な能力を明らかにすることを目的としており、「自立した理学療法士」を次のように定義している。

基本的臨床能力(領域にこだわらず、すべての理学療法士がみにつけているべき臨床能力の基礎)を備えており、指導者側からの積極な指導を必要とせず、職場で働く社会人としての行動が可能な理学療法士

理学療法士15名(5年目の病院勤務者~35年目の養成校勤務者)に対して、経験年数の浅い理学療法士をイメージしながら①自立したと思う要因、②可能となって欲しい行動、③自身に必要であった経験、以上3項目についてインタビューを行っている。そしてインタビュー内容を分類し、カテゴリー化した上で結果としてまとめている。コミュニケーション能力だけでなく、理学療法士にとって必要な能力を幅広く聴取している背景も少し頭に入れておきたい。

さて、結果で示されたカテゴリー「コミュニケーション技術」には6つのサブカテゴリーが示されている。

  1. 患者の背景や状態に合わせて共感的にコミュニケーションをとることができる
  2. 患者・家族のニードを引き出すコミュニケーションができる
  3. 評価結果・治療方針を患者に理解できるような説明をすることができる
  4. 他職種とのコミュニケーションが図れ、患者に関して必要な情報を得ることができる
  5. 自分の考えをまとめ、他者・外部に伝える能力がある
  6. 人の話を聞き理解することができる

また、コミュニケーション能力を重要視しているのは11年目以下の療法士であることが示されている。その理由としては、経験年数の高い者は管理業務等で臨床を離れており、日々のコミュニケーションを意識する機会が少なくなってきているためと考察している。

6つのコミュニケーションスキルを満たすために

422737 / Pixabay

この論文では、どのような要素が必要であるかを抽出することが目的であるため、挙げられた6つのコミュニケーションスキルについてはそれ以上言及されていない。しかし、改めて読んでみると「当たり前のことだよね」と思える6つのサブカテゴリーである。

まずはあなたの日々の臨床を振り返ってみて欲しい。全てのコミュニケーションスキルを円滑に行えているだろうか。もし「これは全然だめだ」と思うのならば、自立した理学療法士としては不十分とされてしまう。そうなれば、急いで修正する必要があるだろう。

しかし、この内容を知っていれば十分に気を付けることが出来、共感的・ニードを引き出す・理解を促すような・的確なコミュニケーションスキルを行えるようになるだろうか。おそらく、無理だろう。そんな簡単に行えるのならば、現場でのコミュニケーションはもっと良いものになっているはずだ。

私は、これらを満たすためには、さらに細やかなコミュニケーションスキルを駆使する必要があると考える。

  • 目を合わせて話をする
  • 楽しい話には笑顔で話を聞く
  • 悲しい話には悲しい表情をする
  • 喜んでいる時にはトーンを上げてあいづちを打つ
  • 辛い時には手を取って静かに寄り添う
  • 行動を促進させるような肯定的表現の言葉を使う
  • 患者の気持ちを表情や背景因子から推測する

キリがないが、具体的には上記のように列挙された知識・技術を深めていくことが必要となる。これらも「言われてみれば、そうだよな」と思えるようなものであるが、実際の臨床で全てが十分に出来ている理学療法士と出会う事はなかなか難しい。

実際、私が行っているコミュニケーションセミナーでは、上記の当たり前のスキルを実技を通して体感しながら獲得してもらっている。目を合わせて話すことの重要性、ちょっとした言葉遣いで変化する心の繊細さ、辛い時にそっと手に触れてもらうことの安堵感…このようなものを実技を通して体感することで、その重要性が明確になる。

なかなか言葉で学んでいても難しい面であり、「患者さんの気持ちになって」という指導だけでは実感を持って理解出来ない。一番良い経験は、あなた自身が入院して患者となり、理学療法を受けることである…が、これも難しい。

おわりに

magica / Pixabay

今回紹介した論文で示された6つのコミュニケーションスキルについて、まずは自分自身に「ちゃんと行えているかな?」と問いかけてみて欲しい。日々の忙しさの中で、思った以上に出来ていない…ということが少なくないはずだ。

もし出来ていないと感じる部分があれば、少し気を付けてみて欲しい、まずはそれだけでも大きな違いが生まれるはずである。

もし出来ていると感じているならば、周りのスタッフを観察してみて欲しい。観察する中で「もう少し明るく話してくれれば、元気になれるのにな」「もう少し目を合わせるだけで印象が変わるのにな」というように、人それぞれのコミュニケーションのクセを見つけることが出来るだろう。

大切であることが自明なコミュニケーションスキル…だからこそ、多くの理学療法士はそれほど重視することなくこれまでの歴史を重ねてきているようにも思える。コミュニケーションスキルがより現場で役立つスキルになるように、徒手療法やファシリテーション技術を研鑽するように、少し取り組んでみて欲しい。

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