「今年で5年目になります」「まだ3年目です」「もう10年目です」なんて会話、理学療法士の中でよく聞かれます。3年なら一通り理学療法の事を知っていて、10年ならもう完全に一人前で…何でもひとまず経験年数で判断されてしまうという風潮ってありますよね。でもね、経験年数って本当に「免許を取得してからの年数」でいいのでしょうか?この記事では、理学療法士における本当の経験年数について考えてみます。
過ごすだけでは経験年数にならない
多くの理学療法士が気付いていることですが、ただ過ごしているだけでは本当の経験年数にはありません。挙げ出したらキリありませんが、ただ過ごすとは次のような状態です。
- 痛みの理由を考察せずにモミモミしている
- 動作観察・分析に基づかない動作指導をしている
- 患者の心理面を考慮せずに会話をする
- 制限因子を見つけずに可動域訓練を行う
- 目的を明確にせずに筋力トレーニングを行う
経験とは見たり聞いたり触ったりすることです。そう考えると、どのような臨床でも経験に当てはまり、仕事をしている限り、経験年数となります。しかし、どうでしょう?そこに進歩はあるでしょうか?
痛みの理由が分かる、動作指導が上手くなる、患者の心が救われるような声掛けをする…これらはぼーっと臨床をしているだけでは絶対に上手になりません。つまり、ただ過ごすだけでは本当の経験にはなっていないのです。
経験を本当の経験に変える
そこで「本当の経験」に変えるためには、普段の臨床を変えていく必要があります。そのポイントとは「丁寧に仮説検証を行っていくこと」です。痛みの理由、制限因子の探索、動作指導のポイント…全ての関わりに対して次のように考えます。
- 仮説形成:この問題はこの理由だ!と、仮説を出す
- 検証作業:ある治療で生じる反応を見る
- 効果判定:効果が出るor出ない、の理由を見つける
評価して治療して再評価して、という言葉で表現してもかまいません。大切なのは自分で合ってるか合っていないのかを、しっかりと見極めることです。
そして経験年数へ
このような検証作業を行い続けていくことで、日々の臨床が経験として積み重なっていきます。では、本当の経験年数が重なっていけば、どのようなメリットがあるのでしょうか?
筆者は、臨床経験が高まれば高まるほど、精度の高い治療を早くに見つけ出せることが出来るようになると考えています。
- 「この痛みは、以前に経験したあれに似ている、だからこの治療をしよう!」
- 「この制限因子は、以前のあれと同じだ、だからこの治療をしよう!」
と。丁寧に仮説検証した経験は、次の患者さんに当てはめて考えることで生きてきます。それが本当に経験を重ねている理学療法士の出来ることではないでしょうか?
おわりに
ベテランで上手い理学療法士は、評価スピードが非常に早いものです。それを、すごい!というだけで形容してしまってはいけません。そんな理学療法士は若手療法士時代にものすごい勉強して、仮説検証を繰り返した臨床を行い、研鑽してきたはずです。是非ともこの記事を読んだ若手療法士のあなたには、日々の臨床を丁寧に振り返りながら過ごしていってほしいです。