理学・作業療法士が知っておきたい「正しい言葉遣い」のポイント

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あなたは患者さんに正しい言葉遣いが出来ているだろうか?

日本語の尊敬語・謙譲語・丁寧語はかなり複雑で、自信をもって「出来てます!」と答えることが出来る人は少ないだろう。とはいえ「まぁ、別に大丈夫じゃないかな」程度には自信がある人も多いはずだ。いや、そこまでいかなくても「自分の言葉遣いは問題ないよ~」という場合もあるだろう。

この記事では、患者さんへの言葉遣いについて考えてみたい。正しい敬語の使い方…というマナー的な要素ではなく、理学・作業療法士がついつい使ってしまう「少し砕けた言葉遣い」について考えていきたい。

コミュニケーション・アコモデーション理論

geralt / Pixabay

さて、言葉遣いについて考えるときに知っておきたい1つの理論がある。「コミュニケーション・アコモデーション理論」と呼ばれるものである。

これを分かりやすく解説しているのが下記である。

対人コミュニケーションは相手とのコミュニケーションを円滑にするための「調節」が行われますが、この「調節」をどのように行うかを説明したものが「コミュニケーション・アコモデーション理論」である。

PT・OTのためのこれで安心 コミュニケーション実践ガイド 山口美和

少しイメージしてほしい。

  • 難聴の方に声を届けるため、ゆっくりはっきり大きな声
  • 赤ちゃんに話しかける時、赤ちゃん言葉で柔らかく
  • 部下や後輩を全力で怒る時、言葉を尖らせて大きな声で迫力を持たせて
  • 上司や先輩にインシデントを報告する際、少し小声で怯えながら

人は無意識に相手の認知機能・社会的地位・関係性といった要素を評価し、円滑なコミュニケーションが行えるように「調整」しているのである。改めて知ると「ほぉ」と思うが、当たり前のことでもある。

このように考えると、療法士が患者さんに話しかける際に、ゆっくり話したり・はっきり話したり・単語で話したりと「調整」することは間違っていないことが分かる。

しかし、療法士が「過剰な調節」を行っている時に、言葉遣いの問題が生じる。

  • 認知症がある
  • 寝たきりである
  • 経済的に裕福でない
  • 運動機能が低い
  • 高次脳機能障害がある
  • 超高齢である

このような理由から、患者さんの存在やコミュニケーション能力を低く評価し、ゆっくり話さないといけない・単語レベルで話さないといけない・大きな声にしなければいけない…ため口でも構わない、と「過剰な調整」を行ってしまうことがある。

これは非常にマズイ。

療法士の「言葉遣い」の在り方とは

shirakawaraku / Pixabay

「コミュニケーション・アコモデーション理論」を背景に、療法士の言葉遣いを考えると、完璧な言葉遣いでなくてもよいのでは?と思えるのではないだろうか。むしろ、目の前にいる患者さんを評価して、最も適した言葉遣いを行えていることが必要ではないだろうか。

…と書くと、多くの読者が「じゃあ、きちんとした言葉を使わなくても大丈夫か!」と勘違いする可能性が高いので、注意してほしい。

時によっては(患者さんによっては)、きちんとした言葉遣いでなくても問題ない、むしろ望ましい時はあるだろう。その一方で、きちんとした言葉遣いを絶対にしようしなければならない患者さんも存在することを必ず頭の中に入れておかなければならない。

療法士はどのような患者さんに対応する時でも、その患者さんに最も適切な言葉遣いを使用出来なければならない。ということは、正しい敬語をマスターしておかなければ、場合によっては適切な言葉遣いが出来ない可能性がある。

…と、書くと「やっぱり敬語使えって話かよ」と思われてしまいそうだが、そうである。使えないといけないだ。

言葉遣いを患者さんがどう感じているか

TanteTati / Pixabay

さて、患者さんに適した言葉遣いを行えば良い。という話だが、ここで療法士が陥りやすいもう一つの問題がある。それは、患者さんが「この療法士の言葉遣い不快だな~」と思っても、療法士に伝えてくれないという事である。

少し話を変えるが、考えてみて欲しい。あなたを初対面で担当する美容師が、ため口でガンガン話しかけて失礼な態度をとってきたら、あなたはどう感じるだろうか。「うわ~こいつ嫌だな~」と思っても、本人はおろか、その美容室の店長や他スタッフに告げることはしないだろう。本人に気付かれないように担当を変更するか、その美容室に二度と行かないかのどちらかを選択するはずだ。美容室は世の中に山ほどあるので、不快なのに継続して行くような場合は無いだろう。

話を戻して、リハビリ場面で考えて欲しい。ため口で失礼な態度の療法士が担当になったところで、その不満を言える患者さんは一体どれくらい存在するだろうか。いや、それほどひどいものなら、少しはクレームとして上がってくるだろう。ふと不快な言葉や態度がポロっと出たくらいで、不満を言える患者さんはいるのだろうか。おそらく、ほとんどすべての患者さんが我慢しながら、患者さん自身が慣れるまで時間が経つのを待っているだろう。

このことから考えると、療法士が「適切な言葉遣い」と判断していても、実は適切ではない場合が少なくないことが容易に想像できる。少し言葉に気をつけながら周りの療法士を観察してみて欲しい。「それはマズイだろう…」というものが少なくないはずだ。

療法士が調節して選択した言葉より、二段階ほど丁寧にするくらいでちょうどよい。と筆者は考えている。それくらいの心づもりをしていても、慣れてくると言葉は崩れてしまうし、乱れてしまうものだからだ。

おわりに

TeroVesalainen / Pixabay

ここまで書くと「じゃあお前は言葉遣い完璧なんだな!」と思うかもしれないが、正直やっぱり自信はない。謙譲語・尊敬語・丁寧語の一覧表なんかを見ると、正直ゾッとします…「こんなの覚えられねぇ、使えねぇ…」と思ってしまうのです。

一方、言葉遣いを完璧にしよう!とまで思っていなくても、「丁寧に関わろう!」と考えている新人療法士の姿を見ると、その姿から「丁寧に関わろうとしているんだな」と伝わってくるものです。きっと言葉遣いを良くしようと努力しているときには、言葉以外の要素も丁寧に振舞えているでしょう。

  • 声のトーン
  • 声のボリューム
  • 表情
  • 身振り手振り

ついつい気を抜いてしまいがちなコミュニケーションですが、丁寧にしようという心構えをしっかりと持っておくことがまずは必要でしょう。そこに、正しい言葉遣いをのせていきたいものです。

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