リハ栄養において低栄養・肥満などの栄養障害を適切に評価することは必須です。
しかし…
「どう評価したらいいの?」
「本当に栄養に問題があるか分からない」
といった声が多数あります。まだまだ適切な栄養評価は療法士に知られていません。
そこで、この記事では、リハ栄養で必須の栄養評価についてまとめました。
この記事の目次
栄養スクリーニング
あなたが担当する患者さんに栄養評価する必要があるでしょうか?
- 「ん~別に痩せすぎてるわけでもないから大丈夫か!」
- 「肥満で膝に問題があるわけでもないし、まぁいいか!」
と思ったら少し間違いです!栄養に関する報告では「全ての患者」において栄養スクリーニングを実施することが必要とされています。あなたが栄養に問題ないと思っていても、潜在的に栄養障害かもしれません。栄養スクリーニングは簡単に素早く評価できるため、必ず下記のいずれかのスクリーニングを行うようにしましょう。ここでは5つのスクリーニングを紹介します。
- SGA
- MNA
- MNA-SF
- MUST
- NRS2002
SGA:主観的包括的評価
評価者の他覚的所見による栄養評価で、世界的に統一された基準として扱われています。
≪明らかな栄養不良の有無≫を評価したのち、少し詳細な評価を行っていきます。≪病歴-体重の変化・食物摂取量の変化・消火器状態・機能性・疾患や栄養必要量の関係、身体状態≫を評価します。これより≪栄養状態良好・軽度の栄養不良・中等度の栄養不良・高度の栄養不良≫の4段階から評価します。
MNA:mini nutrional assessment
65歳以上の高齢者を対象とし、18項目から評価し、栄養状態を3段階で評価するスクリーニングです。ちょっと評価項目が多いので次のMNA-SFが多用されているようです。
MNA-SF:mini nutrional assessment short form
MNAの短縮版でより簡易に評価することが出来ます。
≪食事量の減少・体重の減少・自力歩行・ストレスや急性疾患の経験・神経、精神的問題の有無・BMIもしくは下腿周径≫を評価し≪栄養状態良好・at risk・低栄養≫の3段階から評価します。
MUST:Mulnutrition Universal Screening Tool
成人を対象とした栄養スクリーニングです。医療従事者でなく、家族でも採点出来るようなものです。そのため在宅患者での実用が推奨されています。
評価内容は≪BMI・体重減少・急性疾患≫の3項目を評価し、≪低リスク・中リスク・高リスク≫の3段階から評価します。ただし2点で高リスクとすぐに評価されてしまいます。これは簡易な評価でも出来るだけ落とさないようにするための対応とされています。
NRS2002:Nutritional risk screening
2002年に妥当性が確認2段階の栄養スクリーニングです。MUSTに疾患重症度を加えて判定しているものです。
具体的には≪BMI・栄養障害スコア・疾患重症度スコア≫から評価されます。
まとめ
ここまでスクリーニングでいくつかの尺度を紹介しましたが、どれが良い・悪いという話ではありません。あなたの所属する、働く職場において使いやすく適しているものを使用してください。
栄養アセスメント
さて、栄養スクリーニングでしっかりと評価する必要性が見つかれば栄養アセスメントに移行する必要があります。栄養アセスメントでは大きく下記の項目を評価します。
- 身体計測・身体機能評価
- 血液・尿生化学検査
- エネルギー代謝・エネルギー必要量
1.身体計測・身体機能評価
ここではいくつかの評価項目があります。
体重
下記のように体重は評価していきます。
より細かい評価方法にはこちら:リハ栄養アセスメント、9つの身体計測について
- 現体重(BI):今の体重
- 理想体重(IBW):BMI22で計算した時の理想的な体重
- 通常体重(UBW):体重増減が生じる前の体重
- 体重減少量:(通常体重-現体重)÷通常体重×100
- BMI:体重÷身長÷身長
リハ栄養において大切なことは現体重から必要カロリー投与量を計算するのではなく、目標とする体重を想定してカロリー投与量を計算する必要があります。つまり今の体重だけ知っていても、本当に必要なカロリー量は分からないのですね。
ちなみに「体重減少と栄養状態」・「体重減少量」は下表を参照してください。
%IBW | %UBW | |
軽度低栄養 | 80-90% | 85-95% |
中等度低栄養 | 70-79% | 75-84% |
重度低栄養 | -69% | -74% |
*体重減少量=(通常体重-現体重)÷通常体重×100
有意な体重減少 | |
1w | 1-2% |
1M | 5% |
3M | 7.5% |
6M | 10% |
ちなみに3Mの時に5%でもそこそこ重度になりますので、必ずモニタリングしていってください。というか、体重減少が予期せぬものである場合には必ず丁寧なモニタリングを行っていく必要がありますね。
身体計測
身体計測とは体重以外の体を直接的に評価する方法です。
療法士が直接的に関われる評価としては下記の6つがあります。
- AC:上腕周囲長
- TSF:上腕三頭筋皮下脂肪厚
- CC:下腿周囲長
- AMC:上腕筋囲
- AMA:上腕筋面積(計算から算出します)
こちらも詳しくはこちらに書いておりますので是非ご覧ください。
身体組成計測
身体組成計測とは特殊な機器を使って計測するものです。
これによって筋肉量や脂肪量を測定することが出来ます。
- BIA:生体電気インピーダンス法
- DEXA:二重エネルギーX線吸収測定法
- CT・MRI:筋横断面積測定
1.BIA:生体電気インピーダンス法
生体組織に電気を流して、電気抵抗値から身体組成を測定する方法です。
脂肪組織は電気抵抗が高く、筋・血管・臓器などの電解質が多いものは電気抵抗が低いことを利用しています。
体への負担が少なく安全に測定する事が出来ますが、体水分の増減(食事・飲水・トイレなど)や変動(座位や臥位などの体位)によって測定値が変わってしまうために、測定条件の統制する必要があるとされています。
2.DEXA:二重エネルギーX線吸収測定法
2種類のX線かの塔か比率から体組成を計測する方法です。
脂肪組織はX線の吸収量が小さく、筋・血管・臓器などは中等度で、骨は吸収量が大きいことを利用しています。しかしながら多くは無いものの被爆してしまうために、何度も何度も頻回に評価出来ないのが難点です。多くても月に一回、数ヵ月に一回といった長期的な経時的評価に望ましいものです。
精度は非常に高く、筋肉量の評価…つまりサルコペニアの評価には抜群であるといえます。
3.CT・MRI
療法士であれば見る頻度の高い計測方法です。
直接的に大きさや程度を測ることができるため、信頼性・客観性ともに高く、BIA法のように食事などの影響を受けないのがメリットです。しかしながら全身を一気に評価することが出来ないのが問題です。腰椎レベルの筋量が全身筋量の相関があるため、そこで筋量を把握します。
2.血液・尿生化学検査
血液・尿検査のデータは見るべき部分はたくさんありますが、ここでは必ず押さえなければならないタンパクについて紹介します。
血清アルブミン
詳細はこちらをご覧ください
3.エネルギー代謝・エネルギー必要量
ここまでで低栄養や肥満などが理解されると思いますが、そこにエネルギーの概念を加えて「じゃあ、どうする?」を考えなければなりません。そこでエネルギー代謝量や必要量を計算しなければなりません。
詳細はこちらをご覧ください。
おわりに
こうやって勉強していくと、意外にも難しくないものが多いのです。
少しの勉強で回復する余地のある患者さんを回復にもっていけないのは非常につらいものです。是非とも無知から当たり前に、リハ栄養をもっていきましょう。筆者も引き続き、栄養分野を勉強していきます!