患者さんのリハビリ意欲を高める声かけの方法を知ろう

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患者さんの意欲がリハビリ効果に影響する事は、経験的に多くの療法士が知っています。少しずつエビデンスも構築されてきています。

しかし、どうやって意欲を高めればよいのか。という疑問については、リハビリ業界においてはエビデンス構築がしっかりとなされていないのが現状です。

そこで紹介したいのは、2017年に理学療法科学に採択された私の論文である。

この論文では、患者さんへ日常的に行う声かけに着目し、意欲を高める声かけとはどのようなものかを調査している。私なりにすごく頑張ったので…正直読んでいただきたい。

論文:理学療法時の意欲を向上させる声かけの言い回しに関する予備的研究

喜多一馬,池田耕二

理学療法学 = The Journal of Japanese Physical Therapy Association 32(1), 35-38, 2017-2-28

要旨

〔目的〕理学療法時の肯定的,否定的な声かけの言い回しが,患者の意欲の向上にどう影響するかを明らかにすること.

〔対象と方法〕対象は,調査に協力を得られた入院患者37名(男性17名,女性20名,年齢69.9 ± 12.6歳)とした.紙面によるアンケートにて,トイレ,歩行,疼痛の3つの場面を想定し,各場面で肯定的および否定的な声かけの2つの言い回しを設定し,意欲の向上がみられるかを調査し比較した.

〔結果〕3つの場面全てにおいて,肯定的な声かけの言い回しで患者の意欲の向上が認められ,否定的な声かけの言い回しでは意欲の向上は認められなかった.

〔結語〕理学療法時の肯定的な声かけの言い回しは,患者の意欲を向上させることが示唆された.

j-stageより

こちらの論文はj-stageにて全文掲載されているので、是非とも読んでいただきたい。

Pexels / Pixabay

さて、少し補足していきたい。

この論文では、声かけが患者の意欲に与える影響を調査している。

声かけの枠組みはフレーミング効果と呼ばれるものをベースに、肯定的な声かけと否定的な声かけを設定した。

フレーミング効果とは下記の引用を参考にしてほしい。

フレーミング効果とは、ある選択肢の判断を人が行う場合、その絶対的評価ではなく、自己の参照点(基準点)との対比において比較されるため、絶対評価とは異なる判断を導く可能性があるという効果のこと。同一の選択肢であっても、選択者の心的構成(フレーミング)が異なると、意思決定が異なってくる効果のこと。

例)
ある伝染病に1,000人の人間が感染した。放置すると全員が死亡する。対策案としてA案とB案が提示された。

Question1)
A案による場合、300人が助かる。
B案による場合、70%の確率で全員が死亡する。

Question2)
A案による場合、700人が死亡する。
B案による場合、30%の確率で全員が助かる。

Question1もQuestion2も表現方法が異なるだけで同じことを言っている。しかし、多くの人はQuestion1ではA案を選択し、Question2では、B案を選択した。表現方法の違いにより、人は自己の心的構成が異なってくるため、同じ選択肢でも異なった結論を導くことがあるという例示である。

exBUZZwordsより

つまり、同じことでも伝え方次第で受け取り方が変わってくるということである。ちなみにフレーミング効果を調べていると、広告などの紙媒体で伝えるときの方法を扱っているものがほとんどで、話し言葉に応用している研究は見つけれていない。

確かに、現実的にも言い方次第で快く受け止めてもらえたり、拒否されたりと様々な経験をする。リハビリ場面においても「いい調子ですね、足の踏ん張りに気を付けて、もっと頑張りましょう!」と言うのか「足の踏ん張りがダメですね、そこに気を付けてください」と言うのかは大きく異なる。フレーミング効果を感じる瞬間である。

さて、具体的な方法としては下記の3つの場面を設定し、それぞれに肯定および否定の声かけを行っている。

HugoAtaide / Pixabay

1)トイレ練習場面

  • 肯定的表現:トイレ練習が上手くできれば,家に帰れますよ
  • 否定的表現:トイレ練習が上手くできないと,家に帰れませんよ

2)歩行練習 場面

  • 肯定的表現:歩行練習を頑張れば,早く一人で歩けるようになりますよ
  • 否定的表現: 歩行練習を頑張らないと,一人で歩けるようになるのが遅くなりますよ

3)痛みへのリハビリ場面

  • 肯定的表現:痛いけどリハビリをすれば,少しずつ良くなってきますよ
  • 否定的表現: 痛いけどリハビリをしなければ,少しずつ悪くなりますよ

 これらを質問紙に記載し、これらの声かけを聞いた時に意欲がどうなるかを回答してもらった。

lecroitg / Pixabay

その結果、肯定的表現の声かけを用いた方が、どの場面においても患者さんの 意欲の向上を示すことが示唆された。しかしながら、痛みに関する質問では、否定的表現の声かけにおいても意欲の向上を示す者が多かったりと、まだまだ解明すべき点もあることが示唆された。

よくよく考えてみると、当たりまえの事である。

上手な声かけを行うために

_cbudd / Pixabay

この研究結果からは「患者さんの意欲を高めるという点で困ったときには、肯定的表現を使ってみよう」ということである。

私は「とにかく肯定的表現を使った方が良い!」なんて一つも思っていない。人によっては肯定的表現が苛立たせるような場合もあるし、否定的表現で燃え上がるような場合もあるためだ。そりゃそうだ。

ただ臨床場面で声かけについて考えた時「あっ、肯定的表現を使った方がいいかな」と思ってもらえたら、すごく嬉しい。実際に肯定的表現を使ってみてハマればそれで良いし、イマイチであれば違った表現を使ってみれば良い。そのような判断がリアルタイムで行われて、コミュニケーションに気を付ける機会が増えることが大切だと考えています。

おわりに

jcamilo032174 / Pixabay

コミュニケーションスキルについて語るとき「〇〇という方法は良いよ!」という形で述べられることが多い。しかし現実には、ある方法がハマる人もいるし、ハマらない人もいる。

私は今後の展開として、どのような人にどのような声かけがハマるのかを調査していく予定です。まだまだ「このタイプには、この声かけ!」というレベルまではっきりするのは大変な道のりですが、少しずつ進んでいくつもりです。

療法士が現場で役立つコミュニケーションを体系化するためにも、どんどん頑張っていきましょう!

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