今さら聞けない「サルコペニア」の定義・原因・治療などをまとめてみた!

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最近よく耳にするサルコペニアという言葉…ちゃんと説明出来ますか?

今、この言葉は社会的にもトピックスとなっており、一般の方でも知っています。となると、医療・介護に関わる人達は必ず説明出来なければなりません。

そこでこの記事では、今さら聞けないサルコペニアに関する基礎知識をまとめてみました。

これさえ読めば「知ってるよ!」とドヤ顔で説明出来る事間違いなし!

サルコペニアとは?その定義について

「筋肉量の低下」+(「筋力の低下」or「身体機能の低下」)

RyanMcGuire / Pixabay

サルコペニアとは、骨格筋減少症・筋肉減少症とも呼ばれるものです。

「骨格筋=sarco」「減少=penia」」で、英語からとっているのですね。

狭義には、加齢によって徐々に進行する筋肉量の減少および筋肉機能(筋力や身体機能)の低下とされています。

広義では、加齢を含む全ての原因(活動・栄養・疾患…)による、筋肉量の減少および筋肉機能(筋力や身体機能)の低下とされています。広義のものでは80歳以上の高齢者には50%以上が該当するという報告もあり、もはや見過ごすことの出来ない症状です。

筆者は病院で勤めていますが、入院した時点でサルコペニアになってるな…と思う高齢者は少なくありません。50%というのは本当にそうだなぁ…と実感しています。

症状

様々な症状が出現!

Hans / Pixabay

サルコペニアは筋肉が減るわけですから、筋肉が関わっているものについては全てに症状が出てしまいます。筋肉が関わっているもの…?いやいや、筋肉が関わっていないところを探す方が、人の体では大変です!

  • 足の筋肉が弱る…転倒しやすくなる
  • 手の筋肉が弱る…重いものを持ち上げられない
  • 体幹の筋肉が弱る…ふらふらする
  • 飲み込みの筋肉が弱る…肺炎や息苦しさに繋がる
  • 心臓の筋肉が弱る…疲れやすくなる

このように挙げていくとキリがありません。サルコペニアになって良いことなんて一つもないので、絶対に避けたいところですね。

また、入院患者さんで骨折や脳卒中による症状が出ている部位だけ着目していても、上手く治療出来ないことがこのことからも想定されます。「なんでただの大腿骨頸部骨折なのに、こんなに経過が悪いんだろう…」既往歴や合併症にも引っかかるものがない、そんなときにはサルコペニアが実は関わっていたりするかもしれません。

診断基準

診断にはいくつかの基準がありますが、ここでは代表的なCruz-Jentoftと呼ばれるものを紹介します。上述した定義とマッチしているので、そのまま覚えてください。

Pexels / Pixabay

診断基準
65歳以上で①+②or③が認められる高齢者
①筋肉量の低下:上腕周囲長21cm以下・下腿周囲長28cm以下
②筋力の低下:握力男性30kg・女性20kg以下
③身体機能の低下:歩行速度0.8m/s以下
(Cruz-Jentoft,2010より)

①筋肉量の低下はCT・MRI・DEXA・BIAといった機器を用いることが推奨されていますが、どれもそれなりに大掛かりな機器であるために、簡単に測定することが出来ません。

上腕周囲長、下腿周囲長は誤差が大きく推奨はされていませんが、簡便なので周径を用いて評価していきましょう。慣れれば1分くらいで評価出来ますので、ルーティーンの評価に組み込んでおきましょう!

時期と分類

上記の診断基準をさらにかみ砕くと、サルコペニアの時期や分類も考えていきます。

SplitShire / Pixabay

  • 前サルコペニア:筋肉量低下のみ
  • サルコペニア:筋肉量低下+筋力低下or身体機能低下
  • 重症サルコペニア:筋肉量低下+筋力低下+身体機能低下

わざわざ前サルコペニアというものが設定されているのは、サルコペニアになってから介入するのではなく、前サルコペニアの時期から介入することが必要!ということです。どんな病気やケガでも受傷してからでは治療に時間がかかってしまいます、出来るだけならないように予防することが大切になります。

原因とは

サルコペニアには狭義なものでは加齢のみが原因ですが、広義には4つの原因があります。目の前の患者さんがサルコペニアを呈していれば、原因追及をした上で介入していく必要があります。なので、全ての原因について知っておきましょう。

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原発性サルコペニア:加齢に伴うもの

人の筋肉量は20~30歳でピークとなり、徐々に低下していきます。高齢者では、筋蛋白質の合成促進反応・分解抑制反応が減弱していくため、手術や病気などがなくても自然にサルコペニアが生じていきます。ちなみに、この場合には、筋線維数減少・速筋線維の選択的筋委縮を認めるとされています。

二次性サルコペニア:加齢以外に伴うもの

実際には加齢以外の影響によってサルコペニアが生じることは珍しくありません。入院している患者さんと関わっていると、加齢+活動量低下+栄養不良+手術による侵襲…と、いくつかの原因が複合的に重なることによってサルコペニアとなっています。

活動に関連

活動量低下などによるものです。高齢者になると様々な理由で活動量が低下していきます、一例ですが、次のような時に活動量が低下していきます。

  • 膝が悪くなって歩けなくなる
  • 外に遊びに出かけるのが面倒になる
  • 遊びに行く相手がいなくなる
  • 配偶者の介護が必要である
  • 認知症の影響で外出出来なくなる

これは原発性サルコペニアとは異なり、筋線維数は変化がなく・遅筋線維に委縮を認めるとされています。

栄養に関連

エネルギーと蛋白質の摂取量不足によるものです。人は何も運動しなくてもエネルギーを消費しますし、運動すればさらにエネルギーを必要とします。そこで必要エネルギーに見合った摂取エネルギーが必要となりますが、そのバランスが崩れているとサルコペニアに発展することがあります。次ような場合に注意しましょう。

  • 食事のカロリーが低すぎる
  • どんどん痩せていく
  • お腹減ったと言っている

意外と分かりやすいサインが出ていますので、これがサルコペニアに繋がるのかも…と思って注意深く観察しておきしょう。

疾患に関連

臓器不全・炎症疾患・悪性疾患・内分泌疾患・侵襲などによるものです。例えば、侵襲とは手術や骨折直後の状況を指し、この状態では筋肉が1日1kg減少すると言われています。また炎症状態を認める時には、筋蛋白の異化亢進(分解されること)が認められます。このように疾患に基づくものもサルコペニアの原因になります。

予防と治療方法

ここまでで、サルコペニアが一つの原因で生じているわけではないことが分かったと思います。となると、サルコペニアの原因によって予防と治療方法が異なるのは当然ですね。ちなみに予防でも治療でも考え方は一緒です。それぞれに見ていきましょう。

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原発性サルコペニア

加齢に伴って筋力が落ちている状態ですので、筋力トレーニングを行っていく必要があります。そこで推奨されているのは、レジスタンストレーニングです。「レジスタンス=抵抗」という意味で、負荷をかけた筋力トレーニングを指します。ジョギングや水泳といった持久系ではなく、ベンチプレスなどを思い浮かべてください。

レジスタンストレーニングを行う際、とにかくやればいい!というわけではありません。摂取エネルギーが少なかれば、栄養に関連したサルコペニアに至ってしまう可能性がありますので、食事状況などを考慮してトレーニングを行いましょう。

また、筋蛋白合成を促す必須アミノ酸であるBCAAや、ビタミンDの摂取を促すと、より効果を得れます。リハビリの対象となっている患者さんではリハたいむゼリーという補助食品が推奨されています、是非こちらも併せて勉強してみてください。

「リハたいむゼリー」は患者さんの筋力増強に役立つぞ!

2016.12.11

活動に関連したサルコペニア

安静や運動不足が原因であるため、ひとまずは動きましょう。多くは寝たきり、起きてもすぐに横になってしまう…という活動レベルであるでしょう。まずはベッドから起きて座る、車椅子に乗る程度から始めて、起きることを日常的にしていきましょう。排尿排便のたびにはトイレに行く、食堂でご飯を食べる時にはわざわざ椅子に座る…といった形で、日常的に活動を維持出来るように努めましょう。

トレーニングとして行う際には、レジスタンストレーニングではなく、持久性を高めるようなものを中心に行っていきましょう。ここでイメージしてほしいのはマラソンや水泳ですね。もちろんサルコペニアに至っている患者さんでマラソンは難しいと思うので、頻回に長い時間出来るトレーニング(棒体操や歩行)から取り組んでいきましょう。

栄養に関連したサルコペニア

活動量に見合ったエネルギーを確保できていないことが問題ですので、活動量とエネルギー量を見直すようにしましょう。

  • 動きすぎ?
  • 食べなさすぎ?
  • 両方が問題?

単純に栄養に関連したサルコペニアのみが原因である場合には、エネルギー摂取量を上げるように栄養管理を行えば少しずつ治ってくるはずです。いきなり改善するわけではないので、リハビリなどの活動量をまずは下げて、少しずつ段階的に高めていくようにしましょう。

疾患に関連したサルコペニア

疾患そのものが問題ですので、その治療が最優先になります。しかしながら、全ての疾患が治るわけではありません。原疾患の状態に合わせて「今は活動量を制限しよう」「少しずつ活動量を上げよう」とコントロールしていくことが大切です。疾患が重たく、改善が難しい場合にはリハビリなどで積極的な運動は控えた方が良いでしょう。

どんなリハビリをするの、運動療法は?

上述したように、サルコペニアの原因に沿ってリハビリを展開していくことになります。リハビリといっても体を温めたり、首や腰を引っ張ったりといった機械で行う物理療法と、体を動かして活動する運動療法があります。物理療法によってサルコペニアの改善はなかなか難しい(適応ではない)ので、運動療法によって改善を図っていくことになります。

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  • 原発性…栄養状態を考慮しながらレジスタンストレーニング
  • 活動性…ベッドから起こし、持久系のトレーニング
  • 栄養性…栄養状態に考慮した活動量の決定
  • 疾患性…疾患状態に考慮した活動量の決定

ここで考えておきたいのは、リハビリによって全てのサルコペニアが改善出来るわけではない!ということです。栄養性や疾患性が原因となっている場合には、リハビリはそこそこに控えておいて、医学的な処置・栄養学的管理を優先する必要があるということです。

また、実際には単独の原因でサルコペニアが生じている場合はほとんどないことも知っておきましょう。ガリガリの高齢者が入院してきた…歳もとってるし、活動量も低いし、ご飯も食べないし、病気になってるし…と複合的にサルコペニアが形成されている場合があります。むしろ高齢者の場合には複合的なことがほとんどです。

栄養指導で知っておきたいアミノ酸(BCAA)の役割

さて、サルコペニアの予防・治療に必要なのは運動療法と栄養指導です。

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人の筋肉は蛋白質によって構成されていて、常に異化と同化を繰り返しています(異化とは分解してなくなること、同化とは合成して貯えることです)。若い人であれば普通に生活しているだけで異化と同化のバランスが保たれていますが、サルコペニアになる人は異化が強くなっています。

そこで同化を強く勧める方法の一つとして、アミノ酸摂取が推奨されています。アミノ酸を摂取することで蛋白質の合成(同化)が急激に進むらしいのです!ジムに通う人たちがトレーニング中や後にプロテインなどを摂取することは、まさしくこれですね!

もちろんアミノ酸だけを摂取していれば良いのではありません、他の栄養素とバランスよく摂取すること効率よく吸収されます。合成率は2倍にもなると言われています。適切な食事と適切な運動が大切なのは、栄養学の観点からも推奨できるのですね。

また先述しましたが、高齢者のリハビリ場面でのアミノ酸摂取に効果的なリハたいむゼリーという商品が最近売り出されています。これはリハビリで筋力増強を狙った運動後30分以内に摂取することが効果的だとされています。筋蛋白の合成時間とマッチするためですね!参考記事はこちら!

サルコペニア肥満!?

サルコペニアと聞くとガリガリの高齢者をイメージすると思いますが、実は肥満になっている人がいます。ここ数年でかなりの問題として扱われるようになってきました。筋の減量があるのに、肥満…!相反する状況ですよね。

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肥満というと、それだけで生活習慣病になりやすいなどのよくないイメージを持つと思います。その状態にサルコペニアが加わると、通常の肥満よりもそのリスクがグッと高まると言われています。もちろんサルコペニア単独でも歩行能力の低下、易転倒などに繋がるため、一度肥満になってしまうと改善が難しくなってきます。

ちなみにメタボは肥満状態だけを指す言葉なので、サルコペニアがあるのかどうかを問うてはいません。ただ、メタボで動きにくくなって、活動性のサルコペニアに移行しやすくなっていることは容易に想像できますね。

またサルコペニアの定義では高齢者が対象となっていますが、このサルコペニア肥満に至っている人は高齢者はもちろん、若い人にも存在しています。上の写真なんかはサルコペニア肥満っぽいですよね。最近は転倒しやすい太った子どもがたくさんいて、その子たちもサルコペニア肥満なのかもしれません。

サルコペニア肥満の診断

明確な診断はまだありませんが、下記のものが提唱されています。

  • 筋肉の割合…男性で27.3%・女性で22%未満
  • BMI25以上

筋肉の割合はちょっと良い体重計で測定することが出来るので、自宅でも計測することが出来ます。もし「サルコペニア肥満かも…」と思ったら、下記の体重計を買ってみましょう。安くて良いものを選んでみました。

ちなみに女性の方がなりやすい傾向があります、普通の健康的な生活を送っていれば大丈夫ですので、適度な運動・適度な食事・適度な睡眠を心がけて生活するようにしましょう。こちらの本も併せて読んでみると良いですよ。

ロコモ・フレイルと何が違うの?

さて、サルコペニアと同じくらい最近耳にする言葉に「ロコモ」「フレイル」というものがあります。なんだか同じような言葉ですが、意味は全然違います。間違って「あ~この患者さんロコモだね!」とサルコペニアの患者さんに言わないためにも、一度復習をしておきましょう!

qimono / Pixabay

ロコモ

メタボみたいな言葉ですが、メタボとは違いますよ。

正式名称はロコモティブシンドロームと呼び、和名では運動器症候群です。運動器(筋肉・骨・関節・軟骨・椎間板)の障害によって、移動能力が低下し、要介護になったり、その予備群になるリスクがある状態に至ることです。

すごーっく、平たくいうと「いろいろ衰えてふらふら!」という状態です。サルコペニアは「筋肉痩せて大変!」というイメージですので、少し違いますね。特に「ふらふら!」の概念である移動能力の低下が入っていることを覚えておいてください。

フレイル

サルコペニアやロコモと異なり、心や社会的状況も含めていることが特徴的です。定義は、高齢になって生理的予備能力が低下することで、要介護状態や死亡に至ったりすることです。これは実はまだ明確にされていません。

フレイルでは、高齢になることで生じる生理的予備能(身体的能力だけでなく、心理的状態や社会的状況も含む)の低下を問題として扱っています。高齢者が至る状況を多面的に見ているとも捉えることが出来ます。「心も含めて大変!」というイメージをもっておくと良いでしょう。

サルコペニアの知識を深めるのにお勧めの本は?

サルコペニアについてちゃんと学ぼう!と思う方は、是非とも書籍を手にとってみましょう。

リハ栄養の書籍は読みやすく、理学療法士にとっても理解しやすいのでお勧めです。筆者は下記の書籍を読んで勉強しました。

そこからさらにサルコペニアを詳しく学んでいきたい方は、専門的に書かれた書籍を手に取ってみましょう。

①サルコペニアと運動 エビデンスと実践
サルコペニアについて学び、予防方法である運動についてまとめた一冊です。個別の運動療法についてはもちろん、集団での介入方法についても記載されています。

②サルコペニアとフレイル
少し難しいですが、サルコペニアとフレイルについて詳しく知るためには適した一冊です。学術的に深めたい方にもおすすめの一冊です。

③サルコペニアの摂食・嚥下障害 リハビリテーション栄養の可能性と実践
サルコペニアになると摂食嚥下に関わる筋肉にも影響を与えます。人は食べることで筋蛋白を維持できますので、サルコペニアと摂食嚥下は切っても切れない関係です。

おわりに

私たち医療者にとって、正しい言葉で説明出来ることはとても大切です。サルコペニアは最近の言葉で、一般の方にも広がっているものですから、医療者は正しく説明出来るようになっておくことが必要ですね。

また、医療や介護を提供する上で必須の知識であることもこの記事を読んでいただければ分かると思います。診断されていなかったけれども、実はサルコペニアだ!なんてことは容易にあることなのです。ましてやサルコペニア肥満なんて見た目では分からない部分ですから、知識がないと絶対に見つけれらません。

あなたの治療を正しく行うため、サルコペニアの知識を正しく持っておきましょう。

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