患者さんの心理面を把握するためには圧倒的な仮説検証作業が必要

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あなたは患者さんの心理面をどれほど把握出来ているだろうか。

患者さんの心というのは複雑で「頑張りたいけど頑張れない、前向きになりたいけどなれない、辛いけれども頑張りたい、嬉しいけれども辛い」といった、様々で相反する状況がごちゃごちゃになっているものである。そんな複雑で、しかも形でないものを療法士はどのように把握していけばよいのだろうか。

私は仮説検証作業が一助になる…いや、絶対に必要!しかも、圧倒的な仮説検証!と考えている。

この記事では患者さんの心理面を把握するために、療法士に必要な思考過程について紹介する。

患者さんの心理

avi_acl / Pixabay

考えて欲しいのは、患者さんは自分の気持ちをわざわざ他者に分かるように表現しないということだ。(分かるように表現してくれる患者さんは悩まなくていい)

その前に…あなたはどのような感情を他者に表出するだろうか。

好き・楽しい・嬉しいなどのポジティブな感情は「出来れば伝えたいなぁ」「伝えたら喜んでくれるかなぁ」と思うかもしれないが、それでも「恥ずかしいなぁ」と思ってしまって正直に伝えることはなかなか出来ないはずだ。

それ以上に、嫌い・不愉快・楽しくないなどのネガティブな感情は「面と向かって相手に言えないよ」「直接伝えたら角が立つし」と思って、相手に伝える事はなかなかしないだろう。他者への不満であれば「〇〇さんってさ~」と愚痴を言う場合の方が多いだろう。自身の心身のつらさであれば「ちょっと最近さぁ…」と心許せる人に話すことが多いだろう。

さて、患者さんの気持ちに戻って考えてみよう。療法士が悩む患者さん気持ちはネガティブなものである。

  • 療法士の事が嫌い
  • 療法士の話し方が癇に障る
  • 訓練内容がきつい
  • 自分にだけ愛想が悪い
  • もう頑張りたくない
  • どうでもいい
  • リハビリなんてやっても意味ない

このような内容は出来れば早めに知っておきたいし、出来るだけ対処したいものである。

しかし「思ってても言えないよね」という状況は、患者さんにおいても同様に当てはまる。むしろ立場が患者さんになると「より強くなる」と思っておいた方が良い。療法士と患者さんの関係になると、ますます本当の気持ちは伝えにくくなるためだ。「言ったら迷惑をかける」「言ったら否定することになる」「頑張って治そうとしてくれているのに」と優しさ・気遣い・愛情が患者さんをそうさせている。

もちろん全ての患者さんが当てはまるわけではないが、療法士が悩むケースで多いパターンである。

いや、そもそもやっぱり人の気持ちなんて分かるわけがないのである。療法士自身が自身の心を把握出来ないし、ついさっきまでの気持ちと違う気持ちになったり、些細な事で嬉しくなったり悲しくなったりするものだ。そんな自分自身を把握するなんてすごく難しいのに、手に取ったり数値に出来ない他人の気持ちなんてより一層分からないものだ。「まー人の気持ちなんて分からないよね!」という話である。

いずれにしても「患者さんの本当の気持ちは療法士には伝わらない」と考えながら、患者さんと向き合うことが基本的な姿勢として必要だと考える。

分からないからこそ、仮説検証作業が必要

geralt / Pixabay

このように「患者さんの気持ちは分からない」ということを考えてしまうと、「もう考えても無駄じゃないか」と思えてくる。

しかし、現実的にはそうも言ってられない。患者さんの気持ちに合わせて、療法士は時にケアしたり、時に励ましたり・時に謝ったり・時に治療プログラムを変更したり…と、色々対応しなければならないためだ。患者さんは言ってくれないし、大事になる前に察知しなければいけないから、療法士は敏感になっておかなければならない。本当に大変だ。

そこで、本題の「仮説検証作業」に入りたい。

仮説検証作業とは「仮説を立てて、その仮説が正しいかを検証する作業」である。そのままです。

さて、患者さんの気持ちを把握するために仮説検証をどんどん行っていく。といっても、そんなに難しい話ではない。

  • 悲しいはずだ!(仮説)
  • 嬉しいはずだ!(仮説)
  • しんどいはずだ!(仮説)
  • 頑張りたくないと思っているはずだ!(仮説)
  • 嫌われているはずだ!(仮説)

と、患者さんの気持ちの仮説を挙げていくのである。

そして、検証作業を行っていくのである。といえども、私は直接聞いてしまうことで検証する。

  • 悲しいですか?
  • 嬉しいですか?
  • しんどいですか?
  • 頑張るのは嫌ですか?
  • 私の事嫌いですか?(グサッ)

という具合である。

実はこんな当たり前の作業を療法士は日々臨床において全然行わない。というか、行っているという療法士の話を聞いたことがない。もちろん「悲しいです!」と言ったところで、それが正解である可能性は低い。でも、何も聞かないよりも、少しだけ患者さんの本当の気持ちに近付いている。

まずはこのような経験を山ほど行っていってほしい。

次に、気持ちを聴くのと同時に「なぜ、悲しいと思ったのかな」と、その理由を自問自答してほしい。

  • 目がうつむいている
  • 肩が落ちている
  • なかなか筋力が上がらない
  • 歩行能力や自立度が変化していない
  • 良くなっている実感がなさそう
  • 同じトレーニングを繰り返している

観察から分かるような項目もあれば、観察以外から分かる項目もある。確認出来る部分はするようにしていきたい。「同じトレーニングばかりで悲しいですか」と。

このように、気持ちと理由を探る作業を繰り返していくと、次第と患者さんの気持ちが(ちょっとずつだが)把握出来るようになってくる。

  • あ、この様子は悲しいんだな
  • あ、この様子は嬉しいんだな
  • これを繰り返していると辛い気持ちになるぞ
  • 良くなっている実感が湧くようなトレーニングをしよう

と、把握から対策へと移行することが出来る。最終的には考えても本当の気持ちは分からないが、現実的な対策を行えるようになってくる。

そして、この作業はちょっと行ってみた!くらいでは、患者さんの気持ちを把握し対策するレベルの能力にはならない。「圧倒的な仮説検証作業」を繰り返した療法士が「多分こうかも…!」というレベルに到達出来る。

よくよく考えると当たり前の話である。痛みに対して、関節可動域に対して、歩行能力獲得に対して…理学療法士の介入のほとんどが評価・検証・再評価を繰り返す仮説検証作業であり、繰り返した療法士のみが本当に実力のある療法士になれるのである。このプロセスを患者さんの気持ちに置き換えているだけなのだ。

理学療法士と患者さんの心理

qimono / Pixabay

ここまで読んだ方は「うわぁ、すげぇ大変」と思うかもしれない。しかし、そんな大変な作業ではない。

患者さんの気持ちを少し気にして、少し聞いてみるだけでよいのだ。頭の片隅で気にするくらい。

少し気にするだけで「あなたに担当してもらえて良かった」「あなたが応援してくれて頑張れた」「あなたが見ててくれたら辛いけど頑張れた」に繋がると私は信じている。そんな一言が「理学療法士で良かった」と思える一つの瞬間になると私は考えている。

是非とも、あなたの理学療法に付け足してみてほしい。

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