疼痛への理学療法を再考しよう!定義・分類・評価・治療について!

スポンサーリンク

理学療法士がよく臨床において悩む対象…そう、疼痛!

一生懸命、ストレッチ・モビライゼーション・筋力トレーニング・物理療法…いろいろな方法でアプローチしますよね。一発でスカッとなくなって「痛みがとれました!」と喜んでもらえることもありますし、長期的に関わっても全然変わらなくて「続けても変わらないですね…」と悲しいこともあります。

さて、そんな疼痛に対する理学療法について、定義・分類・評価・治療を中心に再考してみましょう。上手くいかなくてがっかり…というアプローチを少しでも無くすように、知識をたっぷり身に付けましょう!

疼痛の定義・原因(メカニズム・分類)

narciso1 / Pixabay

定義

まずは疼痛の定義を確認してみましょう。

国際疼痛学会では『実質的または潜在的な組織損傷に結びつく、あるいはそのような損傷を表す言葉を使って表現される不快な感覚・情動体験』と定義されています。

この定義から考えると、下記の2点に大きく分けることが出来ます。

  1. 組織損傷によるもの
  2. 感覚や情動を含めた包括的なもの

疼痛というと何か損傷を起こした時のことをイメージしがちですが、それだけではないのです。例えば、組織的には「無い」はずの切断した四肢から、「幻肢痛」とよばれる疼痛を感じてしまう場合がそれにあたります。無い手足から痛みがあるのです。臨床的にも、痛くなる理由がなさそうなのに、痛い場合には、感覚・情動体験が関与しているかもしれません。

原因(メカニズム・分類)

疼痛はその原因(メカニズム)によって大きく3つに分類されます。

  1. 侵害受容性疼痛
  2. 神経障害性疼痛
  3. 非器質的疼痛

1.侵害受容性疼痛

疼痛と聞いて、一番イメージしやすいものです。「炎症・組織損傷によって生じた発痛物質が末梢の侵害受容器を刺激する事で生じる痛み」とされています。外傷や術後の疼痛はこれですね。

2.神経障害性疼痛

いわゆる「神経の痛み」とちまたで言われるものです。「体性感覚神経に対する損傷や疾患によって引き起こされる痛み」とされています。脊髄や末梢神経の損傷によってしびれを伴った痛みが出たり、デルマトームにそった痛みが出たりするものがこれですね。

3.非器質的疼痛

よく分からない痛み、とひとまずは解釈してください。昔は「心因性疼痛」と呼ばれていたものです、今も言ってる人はいますかね。「説明しうる器質的病変がないにもかかわらず訴えられる痛みや、器質的病変は存在するが、それにより十分説明しえない痛み」とされています。侵害受容性でも神経障害性でもない疼痛はここに分類しましょう。

*疼痛の原因(種類)を考える際の注意点

実際の疼痛はこれらが複合的に存在している場合が少なくありません。組織損傷によって生じ始めた疼痛が慢性化することによって、だんだんと非器質的疼痛に移行していくことや、混合してくることは臨床ではよくあることです。患者さんの評価をするときには「すべてが混ざっている可能性がある」と思って、関わる方がよいでしょう。

また、「器質的な問題がある」とまとめても、急性期と慢性期では異なる病態と捉えて関わることが必要です。急性期は器質的な問題が改善するに伴って、疼痛も軽減していきます。慢性痛ではだんだんと器質的な問題が改善しているにも関わらず継続していきます。組織の治癒過程から考えると、大方3ヵ月で治癒しますので、それ以上を越えて持続しているものを慢性痛と定義しています。このときは非器質的疼痛が多いに関連しているでしょう。

疼痛の理学療法評価

疼痛を評価する際にはいくつかの評価尺度を使うことが必要です。疼痛の評価では大きく下記の分類に従って評価を進めていきます。

  1. 主観的評価:強度・性質
  2. 認知的・情動的側面の評価

それぞれに評価尺度を見ながら、紹介していきます。

1.主観的評価:強度・性質

痛みの強さや性質を評価するスケールです。臨床でよく聞くものですので、必ず押さえておきましょう。

ここでは4つのスケールを紹介します。前半3つは疼痛の強度、後半1つは疼痛の性質を評価するものです。

視覚的アナログスケール:VAS

疼痛の強度を評価するスケールで、学生さんも使うくらい臨床での使用頻度が高いものです。

10cmの線を引いて「左端を痛み無し、右端を今まで経験した最も痛く耐えがたい痛みとしたとき、今感じている痛みはどの程度ですか?」と聞き、場所を示してもらいます。左から何センチ(何ミリ)の部分だったかを計測しておき、記録します。

疼痛の評価として簡便であり、急性期の疼痛評価には適しています。しかし、慢性期の疼痛評価としては信頼性が低いとの報告もあります。

数値評価スケール:NRS

こちらも疼痛の強度を評価するスケールで、VASと同じくらい使用頻度が高いものですね。

「【0】を痛み無し、【10】をこれ以上耐えれない痛みとしたとき、今の痛みは何点ですか?」と評価します。本当は0~10の数字が書いたものを出し、指さしてもらう必要があります。実際の臨床場面では動作をしながら、ストレッチをしながら…とその場その場の疼痛を口頭で聞く時に利用しやすいです。

VAS同様に信頼性が高く、慢性期の疼痛評価としても信頼性が高いとされています。しかし、数値となるとVAS以上に頭に残ってしまうものなので「んん~リハビリしてもらって痛みが減ってないって答えにくいよな…さっき7って言ったし、5って答えておこう…」と意識的に変化させてしまうことがあります。妥当性のある回答かどうかをしっかり判断した上で使用する必要があります。

語句評価スケール:VRS

ここまでの3つが疼痛の強度を評価するスケールになります。VRSと言われるとピンとこないかもしれませんが、臨床で常々行われる言葉のやりとりをスケール化したものとイメージしてください。

「次の中で、痛みはどれに該当しますか?」と記載された紙を見せてください。

  • 0.痛みがない
  • 1.ときに少し痛い
  • 2.少し痛い
  • 3.中くらい痛い
  • 4.強く痛い
  • 5.耐えられないほどに痛い

ただ、VASやNRSと比べて、選択範囲が狭いので、やや曖昧な回答になってしまいます。「中くらい…強く…その間くらいなんだけどなぁ…」となってしまうことは少なくありません。というと悪いことばっかりな気がするかもしれませんが、分かりやすいのが最大のメリットです。誰でも答えてくれます。

これらを考えると、VASやNRSは少し詳細に痛みの強度を聞く時に、VRSは答えにくそうな時に使う。といった使い分けが必要になります。いつもVASで評価する…ではなく、患者さんが答えやすいスケールを使って評価するようにしましょう。

短縮版マクギル疼痛質問票:SF-MPQとSF-MPQ-2

これは疼痛の性質を評価するスケールになります。

SF-MPQは感覚的表現または感情的表現に関する質問と強度に関する質問で構成されており、非器質的疼痛における評価に優れています。SF-MPQでは神経障害性疼痛を表現するものがないので、SF-MPQ-2と改良されたものが使用されています。

日本語版として修正されたものでは22項目について「なし~考えられる最悪の状態」の10件法で回答します。質問項目には「1.ずきんずきんする痛み」「2.ピーンと走る痛み」「3.刃物で突き刺されるような痛み」といったように、様々な疼痛の性質を評価することが出来ます。

ここに記載することが出来ませんので、詳しくはリンク先の論文をご覧ください。全文読めますので、最高です!:痛みの評価尺度・日本語版Short-Form McGill Pain Questionnaire 2(SF-MPQ-2)の作成とその信頼性と妥当性の検討

ElisaRiva / Pixabay

2.認知的・情動的側面の評価

定義の部分で説明したように、疼痛とは器質的なものだけではありません。感覚・情動体験なども含めて包括的に評価しておく必要があります。そのため、普段は聞きなれないようなスケールも知っておきましょう。ここでは3つのスケールを紹介します。

Pain Catasrophizing Scale:PCS

カタストロファイジングという状態があります。

これは「痛みがひどくなる…どうすることも出来ない…」といった悲観・否定的感情になることです。実際に痛みの程度はそれほどでも…と思っているのに、以上なほどに固執してしまう患者さんはいますよね。筆者の経験では、交通事故後のむち打ちで疼痛のある患者さんにこの傾向が多いような気がします。

PCSは3要素について評価します。

  1. 無力感:疼痛をどうすることも出来ないという感覚
  2. 反芻:疼痛が頭から離れなくなってしまう
  3. 拡大視:疼痛を実際以上に捉える

Hospital Anxiety and Depression Scale:HADS

疼痛自体が抑うつ・不安・ストレスといった心理的問題を引き起こします。疼痛が慢性化すると、さらに悪化することは臨床でもよく経験するものです。

このような不安・抑うつ状態の評価として用いるものです。

日本語版では14項目あり、不安項目・抑うつ項目が7つずつあります。それぞれ0-3点で採点されます8-10点は苦悩の可能性あり、11点以上は明確に苦悩ありと評価されます。評価に関する具体的項目はこちらのサイトに記載されておりますので、是非ともご参考に利用ください:こちら

Pain Self-efficacy Questionnaire:PSEQ

疼痛が慢性化することによって、自己効力感が低下するとされています。

自己効力感とは「とある目標を達成することにどれくらいの自信があるのか」というような心的状況を指します。疼痛に対する自己効力感とは「痛みを自分でどうにかすることが出来るか、についての自信」と捉えることが出来ます。自己効力感が低下している人ほど、痛みとの相関があることなどが報告されています。痛みがあるから自己効力感が低下するかもしれませんが、自己効力感に介入することで痛みへの考え方を変えることは出来るかもしれませんね。

日本語版に改訂したものの妥当性を検討した文献がこちらになります、是非ともご利用ください:Pain Self-Efficacy Questionnaire 日本語版作成の試み

Alexas_Fotos / Pixabay

3.その他評価スケール

紹介した以外にも多くの疼痛評価スケールが存在します。下記に列挙しておきますので、気になったものは是非とも調べてみてくださいね。

痛み関連機能障害の評価

  • 疼痛生活機能障害尺度:PDAS
  • pain disability index:PDI

疾患特異的機能障害の評価

  • 日本整形外科学会腰痛疾患質問票:JOABPEQ
  • Roland-morris Disability Index:RDQ
  • Oswestry Disability Index:ODI
  • Neck Disability Index:NDI
  • 日本整形外科学会頸部脊髄症評価表:JOACMEQ
  • Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index:WOMAC
  • 日本整形外科学会股関節疾患評価質問票:JHEQ
  • 日本版変形性膝関節症機能評価尺度:JKOM

認知情動側面の評価

  • Fear-Avoidanve Beliefs Questionnaire:FABS
  • Tampa Scale for Kinesiophobia:TSKC
  • Chronic pain Self-efficacy Scale,Pain Coping Questionnaire

身体イメージの評価

  • 身体描写法
  • 二点識別覚
  • 関節覚位置覚
  • メンタルローテーション

活動性の評価

  • 痛み―行動日誌
  • 歩数計
  • 国際標準化身体活動質問票:IPAQ

睡眠の評価

  • Insomnia Severity Index
  • アテネ不眠尺度

社会的評価

  • 日本語版EQ-5D
  • SF-36®
  • 家族・職場関係
  • 社会的役割

疼痛の理学療法評価と臨床推論 城由紀子(理学療法33巻5号2016年5月409-415)より一部抜粋

疼痛に対する治療

Kai_NITEandDAY / Pixabay

疼痛の概要・評価方法を知ったところで、具体的な理学療法の治療に移りましょう!理学療法としては徒手療法・物理療法といった方法で介入することが多くなりますので、この2点を中心に解説します。

徒手療法

侵害受容器に作用

皮膚・筋・関節などの効果器にある侵害受容器に対する機械的刺激・炎症によって生じる疼痛。この場合の徒手療法は下記2種類に大別され、行う事で関節運動時の機械的ストレスを軽減させます。

  1. 筋・筋膜などの軟部組織に対する介入
  2. 関節包内運動に対する介入

関節運動が円滑に行われない状態では、疼痛発生物質が生産され、疼痛を引き起こします。また、血流障害を引き起こすために、疲労物質の蓄積も生じるために疼痛が増悪していきます。

多くのセラピストが現場で使っているのは、軟部組織に対して介入していることがほとんどですね。なので、侵害受容器にアプローチしているのだ!と思ってください。筆者も色々と勉強したことがありましたが、なかなか難しいものが多くて、今では一部の手技しか使えていません…お恥ずかしいです。

筆者は関西在住ですので、このあたりの手技を使っている人をよく目にします。徒手療法にも地域性があるらしく、東と西では全然違うらしいです。昔、新潟へ勉強にいった時に、話題が全然違くてびっくりしました。

末梢神経に作用

末梢神経も結合組織によって覆われています。そのため、神経線維の損傷といっても、周囲の結合組織の状態によっては阻血状態になったり低酸素状態になったりします。末梢神経に作用する徒手療法といっても、実際のところは下記2種類の効果があります。

  1. 神経伸長テスト・滑走に対する介入
  2. 神経自体の伸張性に対する介入

神経なんて伸びるんかい?!と思うかもしれませんが、遺体に対して徒手療法を行ってその効果が立証されているものもあるようです。筆者は神経モビライゼーションが行えませんが、有名な徒手療法のPTの下で勉強していた際には、神経性の疼痛がバンバン消失していたのを目にしました。上手な人はまじすげぇ、です。

物理療法

急性期の物理療法

組織損傷が生じている状態ですので、その改善が最も重要になります。つまり、炎症の軽減です。

外傷・術後の炎症期には下記が適応とされています。

  • 寒冷療法
  • 低出力レーザー
  • 低出力パルス超音波(非温熱)

臨床で最も行われているのはなんといっても寒冷療法でしょう。整形術後の患者さんに「アイシングしておいてください!」と指導する場合も多いです。自分で実施できますものね。

出血量の軽減にはもちろん、自覚的な疼痛にも効果的であることは臨床ではよく遭遇します。また、熱感が強い患者さんの場合には、冷やすことが気持ち良いと感じ、睡眠しやすいという人もいます。

出来ればこのように固定出来るような袋を用意しましょう。

長期化する炎症の物理療法

ちまたの整形外科クリニックなどに行くと「それで保存なの!?」という変形性膝関節症に出会うことはよくあります。また腰痛やリウマチといった、長期的な付き合いが必要な疾患を抱えている人も少なくありません。この場合には炎症が良くなったり悪くなったりを繰り返すため、疼痛もよくなったり悪くなったりという状態にあります。

そのため、炎症を鎮静化させ、疼痛の軽減を図ることが必要となってきます。

基本的には急性期の物理療法と同様の対応でOKです。炎症が低く、熱感の少ない場合には温熱療法を行う事も効果的です。「え!?炎症に温熱って禁忌じゃないの!?」と思うかもしれませんが、ちゃんと患者さんを評価した状態で実施すれば効果的に作用しますよ。筆者も初めてその光景を見た時にはびっくりしましたが、楽になっている患者さんを見て「ほほう」と勉強になりました。

慢性期の物理療法

慢性期になると組織的損傷を有しつつ、複合的な疼痛が生じている状態となっています。そのため、物理療法によって炎症改善を狙ったり、治癒能力を高めたりする行為はあまり効果がないと言えるでしょう。

一方、疼痛そのものを軽減させる物理療法は効果的といえます。電気刺激療法や温熱療法に関してはまだまだ知見が十分とは言えませんが、少しずつ効果が検証されているようです。とはいえ、筆者の経験的にも慢性疼痛に対しては個別性が高く、同じような病態であっても、人によって効果は全然違う…ということをよく経験します。いろんな徒手療法、温熱、電気…散々試した結果、メドマーが最も効果的に疼痛軽減を認めた症例も経験しています。

慢性疼痛と一言に述べても病態はかなり複雑であるように思います、効果判定を繰り返しながら実施していくことが望ましいでしょう。

おわりに

疼痛への理学療法といっても、まだまだエビデンスとしては知見を蓄積中といった段階です。これは疼痛という病態の難しさから、なかなか一概にまとめることが出来ないことが根本にあるように思います。

そのため、エビデンスを考えながらも患者の個別性に沿った理学療法を展開していくことが必要になってきます。となると、いかに効果判定しながら介入していくかがポイントになってきます。

  1. 疼痛を評価し、原因の仮説を立てる
  2. 原因に対して治療介入を行う
  3. 効果発現までの期間・疼痛軽減の目標を設定する
  4. 上手くいったのか・いかなかったのかを判定する
  5. 治療介入を継続するのか・変更するのかを決定する
  6. 上記プロセスを繰り返す

当然のことですが、上記のような過程を踏むことが非常に重要になってきます。慢性疼痛になるとなかなか理学療法効果が見えづらくなってきますので、より繊細な効果判定技術が必要になってきます。難しい分野ですが、頑張って治せるセラピストになりましょう!

スポンサーリンク